インタビュー

DEATH FROM ABOVE 1979


 もはやあらゆるスタイルが出尽くしたと言われているロックの世界において、今後、リスナーを〈あっ!〉と驚かせるのは、まだ誰も聴いたことがない斬新なスタイルよりもむしろ、誰もが知っているさまざまなスタイルを、これまで誰もやらなかったやり方でいかに組み合わせるか、その組み合わせのユニークさ──いわゆる〈コロンブスの卵〉的な発想なんじゃないだろうか? ちょっと大袈裟に言えば、トロント出身の2人組であるデス・フロム・アバヴ・1979(デスフロ)は、そんな21世紀のロックの最新モード(!?)を実践していると言えるのかもしれない。まずなんといっても、ベースとドラムのみという組み合わせがユニーク極まりない。

「もともとはベースでメロディーを演奏するミニマル系ダンス/ニューウェイヴ・サウンドを演奏したかったんだ。最初はジョイ・ディヴィジョンをイメージしていたんだけど、結果として全然違う音楽性に変わったね(笑)。ジェシー(・F・キーラー)の影響で騒々しくてパンキッシュな音楽をやるようになったけど、初めて彼が書いた曲を聴いたとき、すごく新鮮に感じて、瞬時に一緒に活動したい!と思ったんだ」(セバスチャン・グレインジャー:以下同)。

 しかし、デスフロのデビュー・アルバム『You're A Woman, I'm A Machine』を聴いても、ベースとドラムのデュオだとはにわかには信じられない。ディストーションで歪ませたベースがメタリックなリフを刻むパンキッシュなハードロック・サウンドは、どこかドゥーム・メタルっぽいところがある。それはまさにガンズ&ローゼズでハードロックに目覚め、AC/DC、ディープ・パープル、レッド・ツェッペリン、ブラック・サバスなどを聴き漁ってきたセバスチャンと、以前はスタンディング・エイトやブラック・キャット13といったパンク・バンドで活動していたジェシーの嗜好&指向が見事に混ざり合ったものなんだろう。

 しかし、そこで終わらないところがデスフロのおもしろさだ。元々ミニマル系ダンス/ニューウェイヴ・サウンドをめざしていただけあって、この2人、曲によってはディスコ・ビートやブレイクビーツまでも組み合わせているのだ。その相性の良さというか、彼らの強靱な咀嚼力は、“Blood On Our Hands”“Black History Month”“Sexy Results”といった曲を聴いてもらえればわかってもらえるはず。

「ダンス・ミュージックの要素は意識的に入れているんだ。聴いた人々が音楽に合わせてノッてくれて、身体を動かしてもらえればアーティスト冥利に尽きるしね。パンクもダンス・ミュージックも人をクレイジーにさせる力を秘めていると思う。70年代のディスコはもちろん、パブリック・エナミーやランDMCといったヒップホップ、それにケミカル・ブラザーズ、プロディジー、ダフト・パンクにも夢中になったよ」。

 それだけ多彩なバックグラウンドを持っているにもかかわらず、「現在の編成に限界を感じたことはない」とセバスチャンは語る。

「3年続けてきたけど、現状のままで十分に曲作りや演奏はできているから、ギターやその他の楽器を増やす必要はないね。2人だけで大変だと思ったのは、重い機材を運ぶときと、インタヴューに答えるときぐらいさ。できることなら、インタヴュー担当のメンバーを雇いたいよ(笑)」。

 そんなデスフロも、2005年2月には早くも来日公演が決定。〈コロンブスの卵〉的発想を、ぜひ、その目と耳で確かめてほしい。

PROFILE

デス・フロム・アバヴ・1979
カナダ出身のジェシー・F・キーラー(ベース/シンセサイザー)とセバスチャン・グレインジャー(ヴォーカル/ドラムス)の2人によって2001年に結成。地元トロントを中心にライヴ活動を行いながら、2002年にEP『Hands Up!』でデビューを果たす。その後もマイ・ケミカル・ロマンスやアレクシスオンファイアなどと共演し、バンドの評判を高めていく。2004年に入り、EP『Romantic Rights』、ファースト・アルバム『You're A Woman, I'm A Machine』(Last Gang/ビクター)を立て続けにリリース。特にアルバムは本国以外にオーストラリアやアメリカでも発表され、いずれの国でも高い評価を受けている。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

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掲載: 2005年01月13日 17:00

更新: 2005年01月13日 17:57

ソース: 『bounce』 261号(2004/12/25)

文/山口 智男