インタビュー

YOSSY LITTLE NOISE WEAVER

女性らしいしなやかさが美しく響き渡る、元DETERMINATIONSのYOSSY初のリーダー作


 惜しまれながら解散を発表したDETERMINATIONS、そしてBUSH OF GHOSTSのメンバーとして、日本のレゲエ/スカ・シーンに確実な足跡を残してきたキーボーディスト、YOSSY。アルバム『PRECIOUS FEEL』は彼女がYOSSY LITTLE NOISE WEAVERとして発表する初めてのリーダー作品だ。

「長年DETERMINATIONSやBUSH OF GHOSTSといった男っぽい集団の中で音楽をやってきたことのストレス(?)もあったのかもしれませんが、女性的な発想や視点で美しい音楽を創りたいと思って始めていました」。

 バンド時代からレゲエやダブを通低音に独特の物寂しさを表現してきた彼女だが、本作ではジャズ・スタンダード“Ill Wind”、そしてエリス・レジーナのヴァージョンでも知られる“Useless Landscape”といったカヴァーを配置し、エスニックなムードや近未来的硬質感など、さまざまなフィーリングをさざなみ立たせる。

「ピアノの手癖で曲を作ってしまうことだけは極力避けようとしました。長年の手癖に任せてしまうと、平凡でつまらなく、クールではなくなるからです。すべての音やノイズが有機的に関係し合って機能している、と感じるまで、音を足したり引いたりして、足りない音はないか、無駄な音はないか、音楽の中に立って見渡している感じです」。

 ほとんどの録音とミックスが自宅のスタジオである〈bus recording studio〉で行われ、元DETERMINATIONSの市原大資がエレクトロニックなビートに生音や自然音を滑らかに織り上げる。同じく制作段階から深くコラボレートしていたというEGO-WRAPPIN'の中納良恵についても「彼女の唄が今回の作品をよりファンタジックな方向へ持っていってくれた」と絶賛を惜しまない。聴き手の深層心理に入り込んでいく、ある種の思慮深さや内省を保ちつつ、そこからもふわりと自由に漂よおうとする。それは彼女の妥協を許さない芯の強さとしなやかな感性ゆえであるだろう。

「1つのジャンル、ビートを掘り下げてきた経験は私にとって大きな影響を与えたし、意味があったし、素晴らしい経験をしたと思います。特にジャマイカン・ミュージックはいったん離れてみて、あらためてそのユニークさ、素晴らしさをしみじみ感じます。逆にますます好きになっている、と言えます。しかし、今回あえてジャンルをとっぱらい新しいビート感で表現したというのは、今が〈21世紀〉であること、自分が〈日本人〉であることを武器にできるもっとも有効な表現だと思うから。そしてそのほうが、尖っていると思うから。常に新しいものに触れ、変化したいという願望がいまは強いです」。

 ピンと張り詰めたテンションの中に、大切な人から受け取る手紙のような親しみをも感じさせてくれる作品だ。

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掲載: 2005年01月27日 17:00

更新: 2005年01月27日 18:07

ソース: 『bounce』 261号(2004/12/25)

文/駒井 憲嗣