インタビュー

PANICSMILE

福岡音楽シーンの最終兵器!? 久しぶりにマイクを持った吉田肇、そしてメンバー全員が吠え


 ナンバーガールに代表される90's博多系ギター・バンドの源流とまで呼ばれてしまうアーティストがいる。PANICSMILE――衝撃的、圧倒的な音、リズム、言葉、ライヴ、およびバンドを率いる吉田肇(ヴォーカル/ギター)の人間力が以降の福岡音楽シーンに与えた影響は計り知れず、その創造性、独自性は唯一無比。SPALTA LOCALS、ZAZEN BOYS、MO'SOME TONEBENDERと福岡産ロックの傑作盤誕生が相次いだ2004年、偶然か必然か、その締めくくりにふさわしい2年ぶり通算5枚目となるPANICSMILEの新作『MINIATURES』がついにリリースされた。

 前2作では「表面的にはクールだけどよく聴くと……濃いぃなっていうもの、激情、直情的な表現じゃなく演奏も曲も歌もすべて媒介として存在してるような音を創りたかった」(吉田)と敢えてみずからの詞を石橋英子(ヴォーカル/ドラム)に託していた吉田だが、今作でメイン・ヴォーカルに復帰。都市世界の情勢や時世と真っ向から対峙するような鋭い意志と痛切な思考とが、ストレートかつアジテイトに、変拍子轟音サウンドと一体となってハイ・エナジーに伝播してくる。

「以前から〈都市〉っていうのは一つのキーワードになってたんです。ただ前は傍観者的な、その風景の一部みたいな音楽っていう位置づけだったけど、今回はそこにいる人間そのものというか。歌ってる吉田さんも演奏してる自分も、ものすごく〈人間〉を出してる。そこにすごい意味があると思う」(石橋)。

「きっかけになったのは去年の向井(秀徳)君といっしょにやったライヴ、向井君がヴォーカルで僕らがバックで菊地(成孔)さんがオルガン弾いてって場面で。作詞したヤツがそこで歌うっていうとこを同じステージで間近で観た瞬間に、やっぱりこのほうがストレートだなぁと感じて。僕らが後ろでどんな難解な音やってても、彼の言葉はお客にボンボン通じる。それは、曲がポップだから、16ビートで乗れるからとかの次元じゃなくて、向井秀徳の人間力を出してるからで。同じステージで目撃するとそれがなおわかる」(吉田)。

 日本のオルタナティヴ、さらにプログレッシヴ・バンドのホープ的な見解もされる彼らだが、実は「これっていうスタイルが全然ない(笑)。変拍子になった経緯もプログレがやりたかったからじゃなくて拍子もわかんなかったから自分で区切るしかなくて(笑)」(石橋)と語る。彼らが創意する音楽の基本はただひとつ、自由であること。バンドとしてはもちろんメンバー個々人のプレイも思考も。ラスト“REVOLUTION NO.71”について「〈革命はない〉と取ってもらえればシメシメ(笑)」という吉田に対し、「聴きながら皆が思い思いに身体をクネクネほぐすようなエクササイズに使ってほしい。ダンス・チューンみたく」と主張する石橋。「他のバンドと違うところはこういうとこだと思う。石橋さんがそんなこと考えてるなんて僕も初めて知りました(笑)。個々人が(楽曲に対して)気持ち良いとこを探したりおもしろいことを盛り込んでいったり、そこに中毒性があるんじゃない? だから聴く人もそれぞれに楽しんでほしい。もし不快に感じたとしてもその不快感を楽しんでほしい(笑)、ジェットコースターの恐怖感を楽しむみたいにね」(保田憲一、ヴォーカル/ベース)。

 さて、最後にジェイソン・シャルトン(ギター)に訊いてみた。今作を一言で形容すると? 

――「It's GOOD!!!」。

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掲載: 2005年02月17日 16:00

更新: 2005年03月03日 19:39

ソース: 『bounce』 261号(2004/12/25)

文/山崎 聡美