インタビュー

Little Barrie


 おおおっ、ついに来た!! UKロック界には何年かに一度、その後のシ-ンの動向を決定づけるような強力なヴァイブとグル-ヴ感を持った新人バンドが登場するが、久々に現れたそんなメシア的ニュ-カマ-3人組こそが、ここに紹介するリトル・バ-リ-だ! しかも彼らの持つ〈グル-ヴ〉とは、いまのUK特有のダンス・ミュージック的要素を若干内包しつつも、ブル-スやソウルなどのル-ツ・ミュ-ジックに大きく傾斜した、非常にリアルで生身の魅力溢れる〈グル-ヴ〉なのだ。「〈トラフィック meets スライ&ザ・ファミリ-・スト-ン〉という表現が、引き合いとしては一番近いかもしれない」(ウェイン・フルウッド:以下同)、そんな形容の似合うバンドが現在のUKシ-ンから登場したこと自体がなにより衝撃的である。それでは、彼らが挙げてくれたサウンドの要となる3つのキ-ワ-ドを紐解くことによって、リトル・バ-リ-の特異性を探っていくことにしよう。

「1つ目は〈ソウル〉。削ぎ落とされた生のグル-ヴ。バンドの根本。〈ソウル〉という要素は最近の音楽では時として忘れられがちだけど、僕らはそれを取り戻したいんだ」。

 そのための手段として彼らが選んだのが、驚くべきことに、このご時世にエフェクタ-類をほとんど使用しないということ。

「エフェクト・ペダルを踏んで音をブ-ストさせることに頼るより、僕ら自身の持つエネルギーを爆発させることに力を注ぎたいんだ。自分に内蔵されているペダルを踏めなきゃその先には行けないだろ?」。

 なるほど、余分な装飾を放棄したぶん抜き身の真剣の斬れ味は一際鋭くなるし、斬り手の力をよりダイレクトに叩きつけられるということか。

「次のキ-ワ-ドは〈エキサイティング〉。僕らはライヴではパフォーマンスにすべてを注ぎ込むんだ。だからステ-ジはいつもエキサイティングだし、その感覚をアルバムの中にも捉えたいと思ってたんだ」。

 その言葉どおり、彼らのデビュ-・アルバム『We Are Little Barrie』には実にライヴ感溢れる生々しいサウンドが刻み込まれている。そして、そのサウンド・ワ-クに一役買っているのがプロデュ-サ-のエドウィン・コリンズ(元オレンジ・ジュ-スのアノ人!)である。

「彼は自分の意見を押しつけることは一切しないけど、僕らが求める音を手に入れられるように最大限の努力をしてくれる。何曲かでは歌や演奏もしてくれたし。彼がいなかったらこの作品はだいぶ違ったものになっていたよ」。

 長年の経験と豊富な音楽知識を持つコリンズの果たした役割は、ライヴ感の音盤化という命題以外でも相当大きかったようだ。では最後のキ-ワ-ドは?

「〈多様性〉。スト-ン・ロ-ゼズがなぜ凄いバンドだったかというと、彼らのサウンドは実にさまざまな音楽的要素を包含していたからだ。僕らは僕らのやり方でそれを探究していきたいんだ」。

 彼らの楽曲それぞれがブル-スやソウルを主軸にしつつも、フォ-ク、ヒップホップ、サイケ、ガレ-ジなど多様な音楽と微妙にリンクしているのは一聴瞭然(なにしろ影響を受けたア-ティストにMC5やカンまで挙げているのだ!)。この絶妙なバランスで成り立った雑食感覚こそが、DJ世代のル-ツ・ロック・バンドとしての揺るぎないアイデンティティ-であり、自信の表れであるのは間違いない。さて最後に、彼らはかなりのヴィンテ-ジ楽器マニアらしいので、そのことについて訊いてみた。

「そうなんだよ。でも、僕らは別にレトロ趣味で古いのが好きだから使ってるわけじゃないんだ。理由は単純に最近のものより音が良いから。そして何よりフィ-リングも良いしね!」。

 これって何だか、身をもって温故知新を証明しているリトル・バ-リ-の魅力そのものを語ってるように思えてならないのだけど、どうだろう?

PROFILE

リトル・バーリー
バーリー・カドガン(ヴォーカル/ギター)が共通の音楽趣味を持つウェイン・フルウッド(ドラムス)と出会って、99年にノッティンガムで結成。その後ルイス・ワートン(ベース)が加わって現在の3人編成となる。その後ロンドンに拠点を移し、2000年にスターク・リアリティーからシングル“Shrug Off Love”でデビュー。“Don't Call It The Truth/Give Me A Microphone”など数枚のシングルをリリースしたのちにジェニュインと契約を果たす。2004年にはバーリー・カドガンがモリッシーのサマー・ツアーにギタリストとして参加し、さらなる話題を集めた。このたびデビュー・アルバム『We Are Little Barrie』(Genuine/PIAS/HOSTESS)がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年03月17日 13:00

更新: 2005年03月31日 19:03

ソース: 『bounce』 262号(2005/2/25)

文/北爪 啓之