インタビュー

JPC band

レゲエ+ヒップホップ+ダブ+〈和の精神〉!?〈ぬ江戸〉スタイルを根底に邁進する彼らの新作『カンゼオン』から、思いっきり〈NU〉な風を感じとれ!!


「世界に誇れるものが日本にあるのかな?って。でもあるはずなんですよ、世界に誇れる文化は。それを伝えてる奴らが少ないだけで。ただ金があるとかじゃなくて、芸術にしても精神にしても高いところにあると思うし」(TAKUTO、ヴォーカル)。

 日本なるもの、日本的なるものを思うとき、その目が個から離れ、時代とともに共有されてきた伝統へと向かうのはそれはそれで自然なことだけど、〈ぬ江戸〉なる言葉をキーに活動を続けるJPC bandがめざすのは、古き良き日本を取り戻すリヴァイヴァリストではない。彼らは、個々にレゲエやヒップホップ、ドラムンベースといったジャンルを呑み込んだ末に出てきた、今の新しい日本人の音楽を表現しようとしている。「世の中を観る音。仏教的な意味より、感じてくれっていう意味や、風の音、完全な音……いろんな意味に取れる響き、言霊」(TAKUTO)であるというタイトルが付けられたニュー・アルバム『カンゼオン』もまた、メンバー1人1人のさまざまな音楽への指向が編み込まれた結果、完成したアルバムだ。

「その時その時で聴きたい音ってみんな違うし、僕らも聴かせたい音が違うんで」(家族男、ベース)。

「ライヴでは歌い方も演奏の抜きとかにしても違ってくると思うし、これはこれでしかない演奏でホントに生き物。ライヴ、人生が詰まってる」(TAKUTO)。

 そうしたバラバラな個が集まったバンドが一つの集まりとして共有するのは、音楽的指向よりもむしろ自分たちが生きる今の世の中に対する見方や考え方のようだ。メンバーは言う。

「日本は満たされてるし平和な国だから、いろんなことに気付いてるのに見て見ぬふりしてる人も多いけど、無器用でもいいからそういうところに音楽で向き合っていきたいっていうのは、メンバーみんなが思ってる」(舞妓、ヴォーカル/コーラス)。

「日本だけじゃなくて世界中がそういうふうにしてるから、自然がそれを教えだしてるところまで来てるし、みんながもう普通に気付かなきゃいけないところにまで来てる」(JUNNOSUKE、ヴォーカル)。

 「白いものが黒くされてるような現状があるから、そういうのを見抜く目を鍛えてほしいし、それに惑わされてくよくよしたり落ちこんでる暇はない。それを塗り潰すくらいの良いニュースをみんなで作っていけたらいいなと思いますね」(TAKUTO)。

 彼らは自分たちを「時代とか人とか場所とか、いろんな意味の新しい江戸」を束ねんとする「束ねられてない者の集まり」だと話した。ここでもまた、すべての始まりは個だ。「小さいことかもしれないけど、結果じゃなくて行動することに意味があって、それがすべてに繋がる気がする」(舞妓)――グループの歩みもまたそうした一つであり、彼らがこうであってほしい自分像、こうであってほしい今の、そして新しい日本像と言っていいだろう。

  「できることからやって、まず自分が良くなろうっていう。悪い気持ちがいっぱい出てるとそういう世の中になると思うし、ダンスホールでライターの火が灯るようにポジティヴなヴァイブスがいろんなところで拡がっていけば世の中変わるんじゃないかなって信じてますね」(TAKUTO)。

「メッセージを強く発信するってことに無関心な人が多い時代だけど、そこを自分で発信していくキッカケみたいな存在になればいいな」(舞妓)。

 彼らの、「(世の中を)生き抜くためのプラスになるメッセージを届け」(JUNNOSUKE)る活動はまだまだ始まったばかりだ。そしてバンドの音とともにその輪は大きくなっていくだろう。『カンゼオン』にそうした可能性の一端を見ることは決して難しいことではない。

▼『カンゼオン』に参加したアーティストの作品を紹介

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掲載: 2005年03月24日 12:00

更新: 2005年03月24日 19:33

ソース: 『bounce』 262号(2005/2/25)

文/一ノ木 裕之