TOWA TEI(3)
閃きを尊重したかった
新作『FLASH』に顔を揃えたゲスト陣は、とにかくヴァラエティーに富む。クラブ系のバイロン・スティンギリーからルオモ、ポップどころでは森高千里、カイリー・ミノーグ、さらに坂本龍一などなど。しかしその人選には欺瞞がない。気負いなく、ごくごく自然に彼らは同居する。テイ自身がその秘密を明かす。
「音楽を作るうえで、僕の場合は戦略的じゃないですよ。バイロンとはね、もうここ10年はいっしょにやりたいと思っていたんです。ただ、まったく面識もないし、ひょっとしたら掴まんないかもしんないと。で、そうなった時のことも考えて、第2希望まで考えていたんです。ただね、その第2希望的な考え方って〈左脳的(=論理的)〉なのかなと。ブッキングにはいろんな事情もあるから一概には言えないんだけどさ、今回は『FLASH』と銘打ったこともあって、僕は右脳的(=直感的)な閃きをなるべく尊重したかったの。若い時はその閃きに自信が持てない時もあったよ。〈え? これでいいの?〉みたいな躊躇が出てきて、結果余計なことをやっちゃう。でもね、リスナーにはわかるんですよ。作り手のブレっていうのは。確かに若い時はガツガツ考えるんですよ。それは仕方がないし、それもひとつの魅力。ただ、今の僕は〈どうしよう?〉ってなった時に、〈何とかなるでしょ!〉って考えるんだよ。老人力なのかもしれないけど(笑)」
――そういう老人力をクラブ・ミュージックのフィルターをとおしつつ、ポップスとして成立させているっていうのは稀有ですよ。
「(笑)。まあ、僕なりの〈イエーイ!〉っていうか〈俺最高じゃん!〉みたいな感覚が凝縮された40分(=収録分数)なんですよ、今回は。僕の〈イエーイ!〉はORANGE RANGEの〈イエーイ!〉とは全然別モノなんだろうけど」
――内容面に関してもうひとつ。ソロ名義の間に挟まっているSWEET ROBOTS AGAINST THE MACHINE
(SRATM)での活動。今作がポップスとしての高みをめざしているのは、それへの反動とおっしゃっていましたね。
「うん。自分にとって作品を作るっていうことはやっぱり反動の繰り返しなんですよ。SRATMに関して言えば、当時聴いていたエレクトロニカの流れを自分なりに採り込みたくて、それへの呼応だったんです。でもね……やっているうちにPowerBookに向かいながら1日を潰していく感じが嫌になったんですよ。〈これじゃメール書いているんだか、曲作っているんだかわかんねえや〉って。結局、その時使っていたプログラムとか捨てました。それで今回、シンプルに基本に立ち返った部分はあるかな。やり方としては90年代頭に戻ったっていうか、ディー・ライトのLP作ってた感覚に近いんだけど、〈ああ、これが僕のやり方だったんだな〉と噛み締めていますね」
▼『FLASH』に参加したアーティストの作品の一部を紹介。