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インタビュー

THE GLIMMERS

旨いモノもゲテモノもこの偽双子が闇鍋にブチ込んでグリグリかき混ぜれば、食べたことのないミックスになる。さあ、熱いうちに召し上がれ……ていうか、すぐ食え!!


 2メニーDJsを筆頭とするマッシュアップやバスタード・ポップの動きに興味がある人たちならよーくご存知、モー・ベカとダーヴィット・フッケールから成るベルギーの2人組=グリマー・トゥインズ改めグリマーズが、!K7の名物DJミックス・シリーズ〈DJ Kicks〉に登場するっていうんですからこれはただごとじゃありません! さぞや中身は凄いことに……と、その前に名前から〈トゥインズ〉が省かれた理由について訊いてみよう。もしや、あのミック・ジャガーとキース・リチャーズのコンビ名を想起させるものだったからですか?

「そうとも言えるね。でも僕らは自分たち独自のアイデンティティーを作りたかったんだ。だって、〈グリマー・トゥインズ〉という名前を使用するのはかなり作為的だし、そもそもこんな大事になるなんて思っていなかったんだ。どこからか電話が掛かってきて、僕らが何年も頑張って築いてきたモノを失うことにならないよう、準備したほうが良いと思ったんだ」(発言は両者共同:以下同)。

 恐るべしストーンズ……って別に彼らが何か行動をとったわけではないけど(余談ですが、その前にはダーティ・マインズと名乗ってた彼ら。こちらはプリンスのアルバム名から拝借したものと判明!)。さて、ヨーロッパだけでなくここ日本でも話題になっているマッシュアップ。そのなかでもグリマーズの同郷アクトでもある2メニーDJsの人気は凄まじく、その手のミックスCDは飛ぶように売れ、異常ともいえる過熱ぶりには驚かされるばかり。そんな現状について彼らに尋ねてみると、「まるで昔に戻ったみたいだね。ヴァージョン違いのトラックを回してアカペラをその上に乗せたり。ヒップホップが始まった頃、古いディスコ・トラックにMCたちがラップをしたのと似ている。つまり、これはDJ文化なんだよ。DJたちが音楽スタイルを作って発展させてきたんだ」と、至って冷静に分析。それもそのはず、彼らがDJに興味を持って実際にプレイを始めてから、優に20年以上も経っているというのだから!

「きっかけは、NYのヒップホップ・シ-ンが大きくなって、グラフィティやスクラッチが発明され、DJたちがブロック・パーティーをやっていた80年代初頭だね。映画〈ビート・ストリート〉や〈ワイルドスタイル〉で観られるそういったシーンに夢中になって、すぐにターンテーブルとレコードを手に入れた。それから現在まで止まらなかったよ」。

 音楽環境には恵まれてきたようで、「とてもクリエイティヴだよ」というベルギーの土地柄もあって、昔からUKやイタリア、ドイツなどから多くの情報が入ってきていた様子。そして、それらすべてを吸収して彼らが言うところの〈ニュー・ビート〉という独自の音を生み出していたとのこと。それゆえに、彼らの作品は何でもアリでとにかく楽しい! プレイの際、唯一のルールが「良い雰囲気を作り出して、皆をできるだけクレイジーにさせること」らしく、あえてそのプレイ・スタイルに呼び名をつけるとしたら、「フリースタイル、パーティー・ミュージック、〈House meets Disco meets Fun〉……ヨーロピアン・ウェイヴやアメリカン・ディスコ、ハウスなどすべてをポジティヴなエナジーでミックスするんだ」。

 というわけで、マッシュアップとの関係性ばかりを挙げてしまいましたが、実際はラリー・レヴァンやハーヴィーらを愛する人にこそ聴かれるべき、自由で未来的でセクシーでフリーキーなダンス・ミュージックなのです! ラリー・レヴァンを「ダンス・ミュージックとリミックスのオリジネイターのひとりであるという点で崇拝している」と賞賛し、ハーヴィーについては「僕らがお気に入りのDJで何度かプレイを観てきた。彼の音楽のかけ方に多くのインスピレーションを受けたよ。もし彼がいなかったら、僕らの現在はまったく違うものになっていたかもしれない。いま存在するなかで、もっとも素晴らしいDJだよ」とまで言っている彼ら。しかし、グリマーズがリリースしてきた一連の作品、そして今回の『The Glimmers : DJ-Kicks』を聴く限り、彼らはすでに偉大な先輩たちの仲間入りを果たしているのではないでしょうか!?

▼グリマーズの関連盤(?)を紹介

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年05月06日 12:00

更新: 2005年05月06日 18:05

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/青木 正之