インタビュー

TUFF SESSION

ピースフルでとびきりTUFFな新作『SMILE ARCH』を引っ提げて、ついにヤツらが帰ってきた!


 ダンスホール全盛のここ日本において、ヴァイオリンを採り入れた独自のスタイルと、〈歌心〉を大切にしたルーツロック・スタイルのレゲエを聴かせてくれるバンド=TUFF SESSIONが、実に2年ぶりとなるアルバムをリリースした。「好きな人とかモノのために曲を作ることがメチャ多いから」とコーヘイ(ヴォーカル/ヴァイオリン)が話してくれたように、今回も〈君と僕〉といった身近でリアルなモチーフが多く、曲の持つ暖かさが直に伝わってくる。ポリティカルなテーマなどに流れることなく、日常を歌い続けるのはなぜだろうか。

「やっぱり日常がハッピーじゃないと、大きな世界のこともリアルじゃないってのもあるしね」(ヨウヘイ、パーカッション)。

「〈9.11〉の時とか、(そういう歌を)歌いたいなって思った時もあったけど、そんなの俺たちらしくないからさ」(コーヘイ)。

 そんなマイペースなスタンスの彼らを襲ったのが、レコーディング直前のメンバーチェンジ。今作は、この大きな転機を経て産み落とされたのだが、出来上がった音からピリピリした空気は微塵も感じられず、物凄く自然体だ。

「毎晩みんなで呑んで〈これからどうする?〉みたいな時もあったけど、結局俺たちは俺たちかなって」(コーヘイ)。

「みんなで、ああでもないこうでもないって言いながらも、それを乗り越えた時にどういうものをやりたいかという部分は、変わったり、全員が見失ったりしてなくて。だからこそいいものが出来たんじゃないかって思う」(FUNK、ベース)。

 波を乗り切ったこの状況を『SMILE ARCH』というアルバム・タイトルが的確に言い当てているのではないだろうか。とにかく笑顔になれるし、心地良く音に身を任せられるのだ。メンバーが口を揃えて今作の〈肝〉だというコーラスも、レコーディング中に現場の空気で出来たそうだが、これがコーヘイの自由度の高いヴォーカルを引き出すスパイスとしては絶品。トラブルを乗り越えて、完全にTUFF SESSIONは次のステージに立ったようだ。

「前作から2年も空いたけど、ちょうど良かったかな。全然焦ったりしなかったし。なんつうか、1枚目とか2枚目っていうんじゃなくって、〈新生TUFF SESSION〉が出せたかなって感じ」(コーヘイ)。

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掲載: 2005年05月19日 14:00

更新: 2005年05月19日 17:18

ソース: 『bounce』 264号(2005/4/25)

文/斉藤 浩一