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インタビュー

The Dead 60's

60年代はもうとっくに終わったんだ! 新時代のリヴァプール・サウンドは、俺たちデッド60sが作っていくぜ!


 かのビートルズを生んだUKロックの〈聖地〉リヴァプール。その深い森から這い出てきたデルタソニックという変種のレーベルより、デッド60s待望のデビュー・アルバムが完成したとの朗報が届けられた。自身のバンド名を冠した今作『The Dead 60s』(邦題は〈無線衝突〉!)は、ちょっぴりヘンテコで、知的で、ワルで、そして待った甲斐のある最高にクールな作品に仕上がっている。そこで長きに渡ってヴェールに包まれてきた頭脳不良団の謎を暴くべく、さっそく〈無線通信〉を試みた。

「アルバムの仕上がりにはものすごく満足しているよ。完成するまでにかなりの時間がかかったし、本当に一生懸命がんばったんだ。素晴らしい作品が出来上がって、とにかくみんなハッピーだよ」(マット・マクマナモン、ヴォーカル/ギター:以下同)。

 リヴァプールの南部に生まれて同じ学校に通っていたメンバー4人は、セックス・ピストルズやストラングラーズでロックに目覚め、さらにスペシャルズをはじめとするスカや、レゲエ、ダブなどにハマっていくことで知性と牙を磨いていった。そこから生まれた集合体こそが、デッド60sという極めて物騒な名前のバンドなのである。

「バンド名の由来なんだけど、これってリヴァプールで何かを表現するのによく使われるスラングでもあるんだ。エルヴィスっぽいサウンドのバンドを〈デッド60sじゃん!〉って呼んだりね。リヴァプールの音楽といえばどうしてもビートルズのイメージがこびりついてしまっているけど、〈60年代はもう終わったんだ。そろそろ新しいジャンルがあってもいいじゃないか! 若い連中にチャンスを与えようぜ〉という気持ちが込められているんだよ」。

〈ビートルズ以降のサウンドを!〉と標榜するバンドに目をつけたのが、現在の所属レーベルであるデルタソニックだった。コーラルを筆頭にひとクセもふたクセもあるバンドを抱えた、いまや世界が注目する〈ミュータント・レーベル〉の内部事情をマットはこう語る。

「いやマジで、本当にいいレーベルだよ。自分たちがどういうバンドをめざしたいかってことを、俺たち自身がわかるまでたっぷりと時間を与えてくれた。また、レーベルの社長が毎日スタジオに顔を出してくれてさ、まるで親父に見守られてる気持ちだったよ(笑)。そこがデルタソニックの素晴らしいところかな。俺たちらしくなるように手助けしてくれる。デッド60sのいまがあるのもレーベルのみんなのおかげだよ」。

 そんなデルタソニック勢も含めて、昨今のUKシーンは稀に見る好景気を迎えている。過熱気味、と穿った見方をしてしまうほどのムーヴメントの渦中に身を置きながら、当事者である本人はどう考えているのだろうか。

「いいことだと思っているよ。リヴァプールひとつ見てみても、すごく盛り上がっている。ある年はマンチェスターが盛り上がっていてその次はロンドン、みたいにいつも巡回しているようだよね。で、いまはまたリヴァプールの時代が到来したといった感じかな。UK全土を見ても新しいバンドが次から次へとたくさん出てきているし、長い間シーンが注目されていなかったぶん、いまはすごく刺激的な環境だよ」。

 みずからを〈ギャング〉と称し、「バンドとして一歩前進する時は、みんなでいっしょに前進する。そういったギャング的な結束を重んじる姿勢が好きなんだ」と語るマット。レゲエもダブもスカもパンクも同じ荷台にブチ込み、積載オーヴァーで暴走する今作『The Dead 60s』には、同じ目標に向かって突き進むバンドの一体感を感じることができる。

「俺たちはUK中の壁に俺たちの曲名を落書きしてやりたい。スローガンを作り出すことが目標なんだ。つまり〈すべてをシリアスに受け止め過ぎず、もっと笑って楽しんでいこうよ〉ってことで、音楽をとにかく楽しんでもらいたい。音楽に身を任せてみろってね」。

 世界中に立ちはだかる重苦しい壁を嘲笑うかのように〈お前は法律じゃない〉〈暴動レディオ〉とスプレー缶でなぐり書きするデッド60sを、ぜひ身体でもって楽しんでもらいたい。ところで、タワレコの壁に落書きをするならマットはどんな言葉を書いてくれるのだろうか。

「そうだなぁ、〈よろしかったらレンガをひとつどうぞ〉って感じのことを書くかなぁ(笑)」。

 良い子はくれぐれもマネしないように!
▼デッド60sが影響を受けたアーティストの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年06月16日 12:00

更新: 2005年06月16日 19:41

ソース: 『bounce』 265号(2005/5/25)

文/加賀 龍一

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