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インタビュー

三者三様のソロ・ワークスがもたらしたもの

川辺ヒロシ

 〈RISE〉〈SURRRRROUND〉と連なるミックステープ・シリーズや岩城ケンタロウ(DUB ARCHANOID TRIM)とのイヴェント〈DUB-MOSPHERE〉でも見られる、ダブ、ハウス、テクノへの接近がスリリングな最近のDJ活動はもちろんのこと、『OUTSET』に至るうえで重要なのは、川辺が笹沼位吉(SLY MONGOOSE)、DJ KENT(FORCE OF NATURE)と結成したユニット、GALARUDEでの活動だろう(2004年のSLY MONGOOSE『DACASCOS』でもリミックス参加)。フロアの熱を纏った強靱なサウンドや笹沼の重たいベースをはじめ、GALARUDEが『OUTSET』にもたらしたものは大きい。また川辺のリミックス仕事としての近作は、HALCALI『ハルカリミックス』に収録された“スタイリースタイリー”。渡辺俊美の鍵盤にハウシーなトラックを重ねた同曲は、力の抜けた素頓狂さとメロウさを併せ持った仕上がりだ。意外なところでは、今年2月にリリースされたROSSOのシングル“OUTSIDER”のリミックスも手掛けている。

渡辺俊美

 ミックステープから派生し、2004年よりスタートした渡辺監修のジャズ・コンピ・シリーズ〈Inter Play〉も今年2月の『BRUSHING WORKS Inter Play 4』で4枚目。渡辺は一貫してフレッシュな解釈でオールド・ジャズを若い世代へ提示してきた。同じく〈Inter Play〉のサブラインとして2001年にリリースされたコンピ盤『Redeve-lopment』では、PE'Z、ロレッタセコハン、木村華子など、ジャズを核にした現在進行形のエネルギッシュでユニークな才能をいち早く紹介すると同時に、自身のソロ楽曲も披露。また自身のプロジェクト、THE ZOOT 16ではレゲエ、スカ、ダブなどを昇華した荒削りでルーディーなバンド・サウンドを追求しており、昨年11月にリリースされたアルバム『RIGHT OUT!』では、少年期の衝動と大人の色気やロマンが融合した世界を展開している。それはまさしく、SOUL SETでの彼の佇まいそのままだ。

BIKKE

 SOUL SETの休止後、斉藤哲也(undercurrent)、高野寛と結成したNathalie Wiseでの活動はBIKKEの新たな扉を開けた。ドラムレスのアトモスフェリックなサウンドに乗るBIKKEのスピリチュアルな言葉はSOUL SETとも違うヤバさ。クラムボン、駒沢裕城を迎えた昨年9月の『raise hands high』はフィッシュマンズの『LONG SEASON』を彷佛とさせる組曲作品で、ドラマティックな構成と決意に満ちた言葉が彼らのひとつの到達点を告げる。盟友、ハナレグミのファースト・アルバム『音タイム』(その名も“ナタリー”!)とセカンド・アルバム『日々のあわ』、小泉今日子『厚木I.C.』などへの参加をとおして、BIKKEの言葉はより広い認知を得た。なかでも、HALCALIのシングル“ストロベリーチップス”のカップリング“この世界に、この両手に”はNathalie Wiseの、そしてBIKKEの隠れた名作だ。さらに鋭く磨かれた言葉とラップが『OUTSET』に凄みをもたらしている。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年06月30日 17:00

更新: 2005年06月30日 19:24

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/内田 暁男

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