インタビュー

Royksopp

北欧最強デュオが放つ、新世紀のブルース・アルバム!?


「ヒップホップがニュー・ミレニアムのロックなら、僕らはニュー・ミレニアムのブルースだ!」と高らかに宣言するのは、ノルウェー出身のエレクトロニック・デュオ、ロイクソップのスヴェイン・ヴェルゲ。アンビエント風のサウンドスケープとキャッチーなポップ感が絶妙のバランスで共存した2001年のファースト・アルバム『Melody A.M.』は、100万枚以上のセールスを記録して一躍彼らの名を上げたが、あれから4年を経て、ついにセカンド・アルバムの『The Understanding』が完成した。

 美しいメロディーを核に据えたセンチメンタルなエレクトロニカ・サウンドではあるが、徹頭徹尾ソウルフルでエモーショナルであるところが前作と印象の異なる理由のひとつだろう。

「エモーショナルなのは、ミュージシャンの性だと言える部分もあるのかも。だって、エモーションについて語るなら、アスファルト職人よりはミュージシャンのほうが向いてるよね(笑)。それに、いまでも感情を抑えた音楽がクールだと思われている傾向があるでしょ? 僕たちはそれに対抗して、あえて感情を出したいんだ」(トルビョルン・ブルンブラント)。

 また、前作に比べてヴォーカル曲が格段に増えているのも、彼らにとっては新しい試みだ。それによって、ロイクソップが本来備えていた大衆向けの側面がいっそう強調されることとなった。

「ヴォーカルを増やしたのはライヴのためでもあったんだよね。リスナーの側に立ってみると、自宅でアルバムを聴いている時はじっくり音に集中できるけど、ライヴ会場ではズバッとわかりやすく訴えかけてくるものを求めるからさ」(トルビョルン)。

「あと、自分たちを『Melody A.M.』から引き離すためでもあったね。本来のロイクソップに忠実であると同時に、いままでと違ったものを提供したかったから。実際、僕らのヴォーカルは曲にピッタリとハマッて、2人で〈これはイケるね!〉って言いながらスタジオで終始ニヤついてたよ(笑)」(スヴェイン)。

 もともとライヴ・バンドとしての評価も高かったユニットだけに、2度目の参加が決定している〈フジロック〉での最新パフォーマンスも観逃せない。

 デビュー・アルバムでの成功をあっさりと超えるクォリティーの作品を生み出したロイクソップ。右肩上がりとも言える彼らの、創作の原動力となっているものは何なのか?

「ん~、世の中の人が夢見ているようなものは全部手に入れちゃったしなあ。経済的にも潤ってきたし、ファンも大勢いて、多くの人が僕らを羨望の眼差しで見てくれるようになった。普通はそういうものに対する憧れこそが人を駆り立てるじゃない? それでもなお、音楽をやらずにいられないということは……いや、やっぱり理由なんてわからないよ(笑)。ただ僕らにとっては食べることと同じくらいに音楽が〈必要〉なんだ」(トルビョルン)。

 つまりは〈業〉である。ポップなエレクトロニカを生み出していながらも2人が自分たちの音楽を〈ブルース〉と呼ぶのは、抑えがたい表現欲、ひいては表現する者の〈すべて〉が音に封じ込められているからなのかもしれない。

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掲載: 2005年07月14日 18:00

更新: 2005年07月14日 20:00

ソース: 『bounce』 266号(2005/6/25)

文/美馬 亜貴子