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インタビュー

Bow Wow(Hip Hop)

男子三日会わざれば刮目して見よ──あのバウ・ワウも18歳。勇ましく牙を剥く姿は猛犬そのものだ!!


 ステージ・ネームから〈リル〉を取り除いて初めてのアルバムとなった2003年の『Unleashed』は、何よりも子供扱いされることを嫌うバウ・ワウのコンプレックスを露わにする作品だった。〈解放〉を意味するタイトルに示唆されていたとおり、そこで彼は恩師ジャーメイン・デュプリの手を振り解いてみずからエグゼクティヴ・プロデューサーを買って出たほか、〈18歳になるのが待ちきれないよ!〉と複雑な心の内をぶちまける“Eighteen”など、大人の階段を一段抜かしで駆け上がっていくような焦りと苛立ちをアルバムの至るところで散見することもできた――そして、晴れて18歳を迎えた2005年。通算4作目となる新作『Wanted』において、バウ・ワウは再度デュプリとタッグを組むという決断を下した。独り立ちすることに執拗にこだわった前作からすると、今回のコラボレーションは意外な展開にも思えるのだが。

「前回ジャーメインと離れたことで、かえって彼の素晴らしさがわかったし、最初の2枚のアルバムをいっしょに作れたことは本当に貴重な経験だったと思えてきてね。音楽的にも相性はいいし、すでに実績もあるから、もう一度組んでデカいヒットを出してやろうって考えたんだ」。

 今回のデュプリとのリユニオンは、前作で自分が一人前であることを証明してみせた自信と余裕からくるものであり、18歳になったバウ・ワウが精神的にひと回り大人になったことの表れとも受け取れるだろう。名付け親であるスヌープ・ドッグとデビュー時の“Bow Wow(That's My Name)”以来の共演を果たしているあたり、きっと彼自身にも成長の自覚があるに違いない。

「“Caviar”はスヌープの『Doggystyle』に入っていた“That Shiznit”を彼といっしょにリメイクした曲。スヌープという大先輩の残した作品を後輩の俺が受け継いだみたいな感じだね。誇りを感じるよ」。

 その他、アルバムでは交際中のシアラを迎えた“Like You”をはじめ、J・クウォンやT・ウォーターズとの共演も聴くことができるが、やはりハイライトとなるのはオマリオンをフィーチャーした“Let Me Hold You”だろう。少年期からショウビズの世界に足を踏み入れ、俳優活動にも精力的なオマリオンとは共通点も多く、良きライヴァルとして互いに刺激し合っているようだ。

「お互い共通するところも多いと思うし、オマリオンとはベスト・フレンドだよ。俺たちが組んで映画を撮ったら凄くおもしろいものが出来上がると思うんだけどなあ。ウィル・スミスとマーティン・ローレンスの〈バッド・ボーイズ〉みたいなアクション映画をやってみたいね」。

 その“Let Me Hold You”にも象徴的だが、年齢を重ねていくに連れてバウ・ワウの表現幅は確実に広がりつつある。今回のアルバムにおいては、そんな大人びたバウ・ワウの振る舞いを楽しむのも一興だろう。

「16歳ぐらいまでは歌詞の内容にも制約があったけど、俺ももう18歳になっただろ? 正式に大人になったわけだから、何でも言いたいことが言えるんだ。女の子のことにしてもカース・ワードにしても、自由に好きなことをラップできるようになった。もちろん、自分が成長して考えが変わってきたというのもあるんだけどね」。

 今後はシンガーとのコラボ・アルバムのプランがあるのに加え、リアリティ・ショウの準備も進めているようだし、俳優としてもニック・キャノンと主演を務める映画「Roll Bounce」の公開が控えている。少年から大人へ、最大の障壁を乗り越えたバウ・ワウは未体験の領域に足を踏み入れようとしているのかもしれない。

「俺の年代が目標にできるアーティストってそんなに多くないだろ? ましてやラッパーなんて俺以外にいなかったし、そういう意味で俺は凄くユニークな存在だと思うよ。俺が最初で、その任務を立派に果たしたって自負もある。この業界はクレイジーなことも多いけど、自分がしっかりしていれば大丈夫さ」。

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カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年07月28日 15:00

ソース: 『bounce』 267号(2005/7/25)

文/高橋 芳朗