インタビュー

リクルースと共振するクロスオーヴァー・ヴァイブレーション

 個々が個々の色彩を強めつつ、よりシンプルでソウルフルな表現へ――これがクロスオーヴァー界隈の昨今の流れのようだ。UKで人気だというニュージーランドのレゲエ・バンド、ファット・フレディーズ・ドロップからジョー・デューキー(歌声がドゥウェレみたい!)を抜擢しているように、今回のリクルースは現在自身が暮らすニュージーランドの無名(?)アーティストを数多くフィーチャーしながら、よりフレキシブルな作風に転じている。そのしなやかな変貌ぶりは、これまでの〈ジャズとハウスをベースにブラジル音楽やアフリカ音楽をミックスして打ち込みと生楽器の融合がなんたらかんたら〉……みたいな定型の出来上がってしまった〈クロスオーヴァー〉音楽(日本でも多くなってきた)とはまったく異なり、ごく自然に必要なエッセンスで音楽を組み立てたら、幅広いリスナーが聴ける作品になった、といった感じなのだ。そして、〈脱デトロイト〉的な傾向も踏まえたリクルースの本来的な意味でのクロスオーヴァーぶりが、かつてデトロイトで繋がりのあったジョン・アーノルドやジェレミー・エリス(アイロ)らと共振する点は非常に興味深い。特にジェレミーはプエルトリコ暮らしを経た結果、ボンバを自己の作風に吸収するなど、その自然なセンスはリクルースにかなり近いものがある。

 もちろん、それがデトロイト勢固有のものであるわけもなく、UKのコロネル・レッド、またジャネイロ・ジャレルやペヴン・エヴァレットといったキンドレッド・スピリッツ勢の動きもそれに通じるし、ハウス方面だとリクルースのリミックスを手掛けたこともあるジャスト・ワンのソロ作『Lovemusic』が素晴らしかった。国もジャンルも超えた面々が共振する、そういった動きこそがクロスオーヴァーの可能性をまだまだ拡げていくのだろう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月04日 10:00

更新: 2005年08月04日 19:18

ソース: 『bounce』 267号(2005/7/25)

文/高橋 玲子

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