インタビュー

[ 出前 ]ソウル・レーベルの光と影 ソウル遺産を新たな視座でリフォーマット。ここでは名門アトランティックを紹介!!

いまならリオ・コーエンが牽引するヒップホップ・レーベルということになるし、70年代にはロック・シーンを牽引していた。ただ、50年代のアメリカで、黒人音楽に市民権を与えた最初のレーベル、それがアトランティックの当初の姿だった。

 設立者は、駐米トルコ大使の息子だったアーメット・アーティガン(オスマン帝国の末裔だそう)とハーブ・エイブラムスン。47年のスタート以来、ルース・ブラウンやラヴァーン・ベイカー、レイ・チャールズ、ドリフターズ~ベンE・キング、ソロモン・バークといった巨人を送り出していき、その過程でジェリー・ウェクスラー(ビルボードの記者時代に〈リズム&ブルース〉という言葉を作った人)をブレーンに迎え、エンジニアのトム・ダウド、ソングライター・コンビのジェリー・リーバー&マイク・ストーラー(フィル・スペクターの師匠)ら優秀なスタッフを抱えたことでアトランティックは黄金時代を手繰り寄せる。60年代に入るとメンフィスのスタックスと提携してオーティス・レディングやサム&デイヴらを世に出した。また、スタックスと並ぶサザン・ソウルの牙城=マッスル・ショールズとの縁はアレサ・フランクリンを女王の地位に就かせ、ウィルソン・ピケットらを羽ばたかせることとなった。が、67年にはワーナー・ブラザーズと共にセヴン・アーツの資本下に入り、インディー・レーベルとしての歴史を終えることに。70年にはエレクトラも加えたWEA(現ワーナー・ミュージック・グループ)を成し、レッド・ツェッペリンやイエス、ローリング・ストーンズらを抱える一大ブランドとなる一方で、黒人音楽にこだわり続けたウェクスラーはレーベルを去っている……と、駆け足で紹介したが、そこに眠る膨大なソウルの遺産をこの枠で網羅できるわけがない。連載本編でもそのうち紹介しよう。

ARETHA FRANKLIN 『Lady Soul』 Atlantic(1968) どこから聴いても素晴らしいアレサだが、ちょうどパティ・ラベルとメアリーJ・ブライジがカヴァーした“Ain't No Way”収録の今作を推薦。女王屈指のバラッドでもある同曲や、繊細な“(You Make Me Feel Like)A Natural Woman”でも知られる移籍後3枚目のヒット作。

ARTHUR CONLEY 『Sweet Soul Music』 Atlantic(1967) オーティス・レディングに見い出されたアーサー・コンレイのデビュー・クラシック。マッスル・ショールズのミュージシャンたちをバックに迎えたズッシリと黒いリズム・セクションが堪らない。ディープネスのなかに苦さ甘さを滲ませる歌唱も見事だ。

DONNY HATHAWAY 『Extension Of A Man』 Atlantic(1973) 名曲“Someday We'll All Be Free”を収録したニュー・ソウル時代を代表する一枚。爽快な“Flying Easy”や“Valdez In The Country”など、ゴスペルやジャズ、ブルースを包括した求心力のあるソウル世界を展開。邦題の〈愛と自由を求めて〉もハマリすぎ。

OTIS REDDING 『Pain In My Heart』 Stax/Atlantic(1963) 人の歌も自分色に染める……とかいう定型の物言いでは足りない。オリジナルの“These Arms Of Mine”も先達の“Stand By Me”も、ここではすべて彼に歌われるのを待っていた歌なのだ。史上最高のシンガーが弱冠21歳で作り上げた恐るべきファースト・アルバム!


SOLOMON BURKE 『Home In Your Heart : The Best Of Solomon Burke』 Rhino  アトランティックに在籍した62~68年のヒットを詰め込んだ、2枚組41曲の決定的なベスト・アルバム。“Cry To Me”をはじめ、ゴスペル上がりのハードでロッキンなシャウターぶりが凄い。まさにキング・ソロモンの秘宝だ。

WILSON PICKETT 『In The Midnight Hour』 Atlantic(1965) 泥臭くパワフルなヴォーカルが強靱なウィルソン・ピケットのファースト・アルバム。伊達なダンス・チューンの表題曲をはじめ、“I Found A Love”“Come Home Baby”など粋でグルーヴィーな名曲多数。スタックス・リズムの功績も甚大。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月04日 11:00

更新: 2005年08月04日 17:51

ソース: 『bounce』 267号(2005/7/25)

文/出嶌 孝次

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