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インタビュー

THE TEARS

新人ラッシュのUKからとてつもないニュー・バンド現る!? スウェードの黄金コンビがまさかの再開を果たし、大胆で美しすぎるデビュー作をリリースしたぞ!!


 再結成が花盛りの昨今。とはいえ、さすがに元スウェードの黄金コンビにして95年に強烈なケンカ別れをしていた2人が仲直りしたという情報にだけは、マジでド肝を抜かれました。しかもリユニオンではなく、新バンドを結成!

 スウェードといえば、グラムとインディー・ロックを掛け合わせた音楽性で、グランジ&オルタナ旋風吹き荒れる92年のUKに突如登場して話題を独占したバンド。ご存知ない方に説明するなら、いまでいうリバティーンズやフランツ・フェルディナンドのような、シーンの流れを変えた重要バンドだと思っていただければベストかも。しかも言うことなすことゴージャスでスキャンダラスながら、スタイルではなくその音楽性ですべてのギター・ロック・ファンを虜にしたあたりが特別だった。しかし、ブレット・アンダーソン(ヴォーカル)が取材で〈俺たちは精神的なホモセクシュアル〉みたいなアホばかり言うのに嫌気が差し、心身共に疲弊したバンドの片翼=バーナード・バトラー(ギター)は脱退。その後、ソロをやったりユニットをやったり、リバティーンズのプロデュースをやったりしていた。そしてスウェードが休止した2003年、ブレットがバーナードに仲違い後初めて連絡を取ったのが、ティアーズ結成のきっかけになった。

「まあ、俺とブレットがまたいっしょにやることに対してファンが期待してくれてるのは、やっぱり嬉しいよ。もっとも、俺たちは制作するとなるとシンプルに純粋に、ひたすら音楽を作っているだけだったな。余計なことは一切考えない。いい音が上がったと思ったらブレットに渡してみて、彼も気に入れば歌詞を書いてくる、といった感じ。昔のものと(新しい曲を)比較したりすることもなかった。だから本人たちとしては、曲作りでのプレッシャーはまったくなかったね」。

 取材に応じてくれたバーナード・バトラー(以下同)は、相変わらずの生真面目さで冷静にティアーズを分析する。突然電話をかけてきたブレットとは日常の会話からスタート。脱退時の怒りも、「時間が経ったし、いつの間にか忘れていた」のだそう。とはいえ、バーナードの曲作りが追いつかないほど歌詞を書きまくったブレットのことを、いまは愛ある目線で振り返る。〈次の曲をもらいに行く〉というブレットからの電話を受けて、慌てて曲を書き上げたこともあったのだとか。

「それをブレットの前で弾きながら〈あぁ、きっとバレる。たったいまやっとできた曲だってことが、絶対バレる……〉って(笑)。ドキドキしたよ。小学校のころ、まったく準備しないで挑んだテストのことを思い出したね。そういうときに限って、先生に質問されたりとかさ。でも、ブレットのプレッシャーのおかげで、自分では思いもよらなかった不思議な(曲の)流れが作れた。ホントに、後から後からアイデアが湧き出てきたんだよ。つまり、締め切りがあるほうがいいものが作れるって気付いたわけ(笑)」。

 こうして約1年半に及ぶ制作期間を経て生まれたのが、ティアーズのデビュー・アルバム『Here Comes The Tears』だ。天才と騒がれたバーナードの太くうねるギター・ラインは、近年のどのギタリストの音よりも記名性が高い。加えて、ブレットの声もスウェード時代とは一味違う幅広さと共に響いてくる。サウンド全体にはサイケデリックなアレンジがなされ、パッと聴いて効果を発揮するポップ・チューンというよりも、音の層を隅々までじっくりと味わってそのふくよかさを体験したい作品だ。

「(これまでの自分たちの作品との)いちばんの変化は、今回アルバムをプロデュースするにあたって、典型的といわれるサウンドやレコーディング方法に、自分で〈ちょっと待てよ〉と言えたことかな。より個人的でエキセントリックなアルバムを作るにはどうしたらいいかを、すごく考えたね。今回、ほとんどの作業を僕の自宅にある簡易スタジオでやったんだ。人を入れずに2人だけの作業だったからこそ、より個
人的なものになったし、サウンドもいろいろチャレンジできたね」。

 スウェードの曲は今後のライヴではやらぬ、という宣言も潔い。この2人の魂のコラボレーションが、ようやくスタートしたことになる。
▼関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年08月04日 11:00

更新: 2005年08月18日 17:32

ソース: 『bounce』 267号(2005/7/25)

文/妹沢 奈美