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インタビュー

RAHEEM DEVAUGHN

独特のアーティスティックな佇まいで迫るラヒーム・デヴォーン。極彩色のソウルと濃密な愛が紡ぎ出す豊潤で崇高な輝き……ARE YOU EXPERIENCED?


 ケニー・ドープがプロデュースしたネオ・クラシカルな先行シングル“Guess Who Loves You More”が話題を呼んでいたラヒーム・デヴォーンは、ニュージャージー出身~ワシントンDC育ちのシンガー。ジャズのチェロ奏者であるアブドゥル・ワダッドの息子、という出自がラヒームの音楽に具体的にどう影響を与えたかは測りかねるが、「独立して自分の作品を作ろうと思ったのは父の影響だ」と彼は話す。そんな〈自分の作品〉は、このたびジャイヴからリリースされたアルバム『The Love Experience』が初めて……かと思いきや、実は彼、自身の運営するインディー・レーベルからすでに4枚ほどCDを出しており、「50セントっぽいスタイル」というミックステープも数本リリースしていた。

「いまでもふたつのグループで活動しているよ。ひとつがアーバン・アヴェニュー31といって、ソウルとコンシャスなヒップホップをフュージョンしたようなグループ。その後、DC出身の仲間とクロスローズっていうプロジェクトも始めたんだ。それに以前はロック・バンドもやってたし、いろんなことを試してきたね。新作は、そういったいままでの音楽経験がすべて活かされたレコードだと思うんだ」。

 2002年にはサントラ『Drumline』に楽曲を提供し、昨年は7サンズ・オブ・ソウルというゴスペル・グループの作品に客演していたラヒーム。だが、彼の存在が最初に取り沙汰されたのは、2002年にリリースされたジャジー・ジェフのリーダー作『The Magnificent』においてではないだろうか。今回のラヒームのアルバムでは、そこに関与していたケヴ・ブラウンやピート・クズマらタッチ・オブ・ジャズの面々が制作に携わっている。

 「ケヴ・ブラウンやラッパーのサイ・ヤングが俺のDCの仲間で、彼らを通じてジャジー・ジェフと知り合ったんだ。ジェフは俺の良き相談相手で、指導者でもある。彼と会ったことによってケニー・ドープやドゥウェレとも出会えたんだ。いまはケニーと密に仕事をしていて、タンザニア・ラティフっていうスゲー格好いい女性(ジャジー・ジェフ関連作にも客演)をいっしょにプロデュースしてるよ」。

 そのタンザニアがバックで歌った“Is It Possible”は当初ドゥウェレのために書いた曲だそうで、実にネオ・ソウル的な繋がりを意識させるが、ラヒーム自身は自分の音楽を〈R&B・ヒッピー・ネオ・ソウル・ロック・スター〉と呼んでいるようだ。

「滑らかな響きがあるだろ? 俺は自分をソウルフルなシンガーだと思っていて、しかもどの作品もヒップホップの影響を受けている。俺が街を闊歩している時に感じられるバップな感じ、それが俺のなかの〈ヒップホップっぽさ〉なんだ(笑)。ま、俺のレコードが出て、新しいカテゴリーができるといいなと思っているけどさ」。

 加えて彼は「俺はヒッピーだ。人とは違う生き方をしている」とも言う。なるほど、そのちょっと〈異端〉な感じはアルバム・ジャケットのアートワークにも表れているが……。

「俺のメッセージは、がんばりすぎないで愛を見つけるということ。それに、愛にはあらゆる形や色があるんだということ。そういったことを描いているんだ。だからああいったアートワークにしたのさ」。

 同じマネージャーを持つジニュワインのバックでも歌っていたというラヒーム。そんな彼のファルセット、または“Who”などの楽曲はプリンスを連想させる。そのあたりからして何とも大物感が漂う。

「もしプリンスのために曲を書いてくれ、なんて言われたらあの曲(“Who”)を捧げていたと思う。ああ、俺の作曲魂がこういった曲を書かせてしまうんだよ」。

 音楽同様カッコいいことを言いやがる。そして、そんな姿もまた似合ってしまうのが、このラヒーム・デヴォーンという男なのだ。
▼ラヒーム・デヴォーンの参加した作品。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年09月08日 13:00

更新: 2005年09月22日 20:01

ソース: 『bounce』 268号(2005/8/25)

文/林 剛