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インタビュー

Takuji a.k.a.Geetek

沖縄を拠点に自由な感覚で音遊びする彼が、カラーの異なる2枚の新作を同時リリース! どちらも強烈な個性を放つエレクトロニック・チャンプルー!


 80年代ディスコをリアルタイムで体験し、その後クラブ・シーンを横断するDJとして活躍。心地良い波の音で始まり、強靱なビートが立ち昇るオープニングから引き込まれていく2000年のミニ・アルバム『MENSOLE OF SOUND』で、鮮烈なデビューを果たしたTAKUJI a.k.a. GEETEK。2003年にチルアウト感覚の強い沖縄民謡のリミックス盤『音遊び』、そして同年にエレクトロニック・ダンス・ミュージックの全方向性を提示した川崎カオルとのユニット=G.K.でのアルバム『GK SOUND』を発表後、出身地である沖縄に居を移した彼が、かの地より2枚の新作をリリースする。まず、このところ刮目せずにはいられないクルーエルからリリースされる初のフル・アルバムが『めんそーれ of Sound』だ。

「別に東京が嫌いっていうわけでもなくて、いまでも東京が恋しいですし、たまにレコード屋に行ってひさしぶりにレコードをサクサクするのも楽しいです(笑)。でも、情報量の多い東京にいてダウンテンポな方向に行くよりも、自然な場所で最先端のダンス・ミュージックをやるっていうのがおもしろいかなっていうのもありましたね」。

 まさに沖縄ローカルともいえる高校生の生活感を形にしたリリックとウチナーグチのイントネーションが日本語ラップとは一線を画すAwichとの“Jeally”、あるいはG.RINAをフィーチャーしたキュートな“Good Luck”に聴き手はレゲトンとの共時性を見い出すであろう。そしてJazztronikが参加した“Rock With You”にある流麗なハウス・アプローチなど、実に多彩な広がりを持つゲスト陣を迎えている。80'sディスコ世代の煌びやかさと90年代の多様性に満ちた音楽を皮膚感覚で吸収してきた彼は、多彩なリズムを実にナチュラルに発信する。

「オキナワン・フレイヴァーは入ってないんですけれど、聴き方によっては沖縄っぽい=イビザっぽいっていう感じは入っているかもしれないですね」。

 あえて沖縄的記号を排したことで、雑多な折衷感覚を生んでいるところが興味深い。今作のチャンプルー・ミックス精神は、DJとしての嗅覚と奇跡的なバランスを保ち、ワールドワイドにアピールするに違いない。

「ちょうどポップ感とアンダーグラウンド感の両方の要素が入っていて、実際ちゃんとクラブ・プレイもできれば、家でも聴けるアルバムになったかなと思います」。

 変わってリミックス・アルバム『カチャーシー IN DA CLUB』。〈カチャーシー〉というのは沖縄でお祭りの場や結婚式など、行事の最後に行われる踊りのこと。単なるリミックス・ヴァージョンのコンパイルではなく、民謡独特の土臭さに、妖術的なまでのトリップ感を湛えたダブや、いなたいオールド・スクールなビートといったさまざまなリズムを加えることによって、トータルとしてのうねりを醸し出している。

 「僕もそうなんですけど、沖縄の若い世代はあたりまえすぎて民謡を聴かないですから。なので自分も含めて、沖縄民謡の再確認のきっかけになれたらというのはありますね」。

 太鼓と三味線と唄というシンプルな構成のカチャーシーを、音圧やアタック感でボトムアップさせることで、クラブとお祭りの双方を爆発させるプロダクションには目を見張るものがある。

「英語で言ったら〈レイヴ〉になるんですか(笑)? 初めてドラムンベースを聴いたときに、カチャーシーみたいだなって思ったんですよ。踊るための音楽」。

 全曲沖縄で制作された『めんそーれ of Sound』と『カチャーシー IN DA CLUB』は、ドラムンベースのスピリットを守り続ける彼が沖縄という出自をテーマに、新たな知覚の扉を開く作品として、清々しくヴ
ァイタルな説得力を持って迫ってくる。

「沖縄民謡のなかから新しいジャンルができればなって。今回やってみて、融合の可能性はさらに感じてます。ジャズだったりアコースティックな音楽も聴きますし、自然と最新の音も聴きたくなりますし、沖縄を拠点に活動できていることがちょうどいいスタンスにいるかなって思いますね」。

 めんそーれ(=いらっしゃいませ)、GEETEKの世界へ!

▼関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2005年11月24日 14:00

更新: 2005年11月24日 20:04

ソース: 『bounce』 270号(2005/10/25)

文/駒井 憲嗣