キキの後に聴きたいコンテンポラリー・ゴスペル三態
【クラーク・シスターズ】
キキの母親=カレン・クラーク・シェアードは、70年代にデビューしたクラーク・シスターズという5人姉妹グループの出身だ。パワフルかつ優雅なハーモニーでアーバン・ゴスペルの礎を築いた彼女らは、85年の“Is My Living In Vain”がエクスケイプに焼き直されるなどR&B方面への影響も多大。アルバムはトリオ編成での94年作以来ご無沙汰だが、ミッシー・エリオットらと絡みながら4作をリリースしているカレン、地元デトロイトでのライヴ盤が評判を呼んで昨年には新作も出したドリンダ、またオルガン奏者でもあるトウィンキー、とソロ作は続いている。各々の作品に〈クラーク・シスターズ〉が登場しているようにグループも活動中。再結成盤も待たれるところだ。
(林)
【R&Bフォーマット】
キキのようなR&B風のゴスペルが広く人気を呼んだのはメアリー・メアリーが“Shackles”で華々しく登場してきた2000年頃からだろうか。以降もこの姉妹はR&B色の強い作品を出していくが、続いて同じくデュオのパム&ドゥティがエディ・Fらと組んでフロアライクな楽曲を発表。その少し前にはローリン・ヒルが関わったシーシー・ワイナンズのアルバムやヴァーチュー、キム・バレルらの諸作も話題になった。また、デビュー時にR・ケリーと組んだトリニティ5:7は3作目でミュージック“Love”の替え歌を披露。ヨランダ・アダムズはジャム&ルイスと組み、デスチャのミシェル・ウィリアムズもゴスペルのソロ作を発表するなど、世俗の匂いを放つ傑作は多い。
(林)
【多様なスタイル】
一口にゴスペルといってもその音のスタイルは多岐に渡るわけで、キキのようにメインストリーム系じゃなく、オーガニック・ソウル系の意匠によるゴスペルもある。その代表例は、ニューオーリンズ録音のライヴ・アルバム『Live From The House Of Blues New Orleans』をリリースしたばかりのリサ・マクレンドン。かつてローリン・ヒルにも例えられたナチュラルな佇まいが味わえるはずだ。また、典型的なクワイアものからジャズハウスまで多様なスタイルで歌える、アン・ネスビーのような大ヴェテランの活躍も重要だ。ちなみに、アンの孫であるパリスはTV番組「American Idol」に出演中で、キキとは同世代にあたる。新しいゴスペルの担い手はどんどん登場してくるのだ。
(出嶌)
リサ・マクレンドンの2006年作『Live From The House Of Blues New Orleans』(Integrity/Columbia)
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掲載: 2006年06月22日 18:00
更新: 2006年06月22日 19:30
ソース: 『bounce』 276号(2006/5/25)
文/出嶌 孝次、林 剛