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インタビュー

Kierra Kiki Sheard

圧倒的な歌唱力と若々しい情熱によって切り拓かれた新しいゴスペルの光と道──未来はキキのためにある


「TVCMで私の曲が流れてるなんてホントに嬉しいわ!」──日本における彼女の人気の過熱ぶりを報告すると、キキは無邪気に喜んだ。遊びたい盛りだろうに、昨年大学に入学した彼女は、期末試験の合間を縫ってアルバムの最後の仕上げに取りかかったり、インタヴューに応じたりと忙しい毎日を送っているらしい。

「大学では〈エンターテイメント法〉を学んでいるわ。シンガーとしてはすでに関わっている業界のビジネス面を学んで、今後のキャリアに活かしたいと思って」。

 そんなにがんばることないんじゃないの?と生来のナマケモノであるぼくなどは思ってしまう。2004年のデビュー・アルバム『I Owe You』とそのリミックス盤『Just Until...』が大いに話題となり、彼女はさまざまなシンガーたちからリスペクトを集める存在になっているのだ。例えばこんな人も……。

「私も驚いたわ! マライア・キャリーのような偉大なシンガーに誉めてもらえるなんて、信じられないほど嬉しい!」。

 そんなキキの魅力の源は、カリスマ的ゴスペル・シンガーである母親のカレン・クラーク・シェアードから譲り受けた天賦の才能と、現代的なゴスペルのなかでも思い切ってアーバン路線に振った音楽性にある。要するに圧倒的なヴォーカル・スキルでR&B顔負けな格好良いサウンドの曲を歌っちゃうのだ。前作の人気曲“Let Go”がそうだったように、教会っぽい匂いを感じさせない彼女のゴスペルはまさしく新世代のもの。ニュー・アルバム『This Is Me』も、とびきりノリの良いアップが大勢を占める。特に“Let Go”を制作したウォーリン・キャンベルが手掛けた“Yes”“You”という2曲のアップが強力だ。

「ウォーリンは私にとってお兄ちゃんのような存在でね(笑)、〈このキーで歌ってみて〉というふうに指示を出しながら私のヴォーカルを上手く引き出してくれたわ。スタジオでは居心地の良い雰囲気を作ってくれて、とても楽しかった!」。

 ちなみにこれらの曲にはメアリー・メアリーのふたりもソングライターとして参加。やはりアーバン・ゴスペルで成功しているデュオで、キキいわく「彼女たちはお姉さん的存在」とのこと。彼女らの曲に限らず、なんだかとてもアットホームなスタジオ風景が浮かんでくるのがこのアルバムの特徴で、フレッド・ジャーキンズ率いるダークチャイルドのゴスペル部門が手掛けた“You're The Only One”には、フレッドの息子のリル・フレディが制作陣にクレジットされ、またイントロ部分にはビヨンセ・ジャーキンズなる女の子が登場している。

「ビヨンセはリル・フレディの妹で、年齢はたしか現在9歳くらい。とってもいい子なの!」。

 家族的と言えば、初めてラップに挑戦したという“Have What You Want”などの数曲はキキと弟のJ・ドリューとの共同制作。これぞファミリー、である。

「彼は16歳になる私の弟。音楽的才能があって、次々とおもしろいアイデアを出すし、仕事が速いの。いまいちばん夢中なのはバスケットボールみたいだけど(笑)」。

 キキ情報によれば「13歳ぐらい」だというリル・フレディにしろ、この弟君にしろ、まったく早熟なことだが、そういう環境だからこそ、キキのように若くしてスターダムを駆け上がる才能が育つのだろう。そんな彼女の目標とするアーティストは「母や叔母たち、それからメアリーJ・ブライジ」。そういえば、たしかメアリーもキキを相当気に入っていたはずでは? リスペクトし合う相手がいずれも大物というのが、キキの器のデカさを物語っているようで……それでも彼女はまだ十代。もっともっとビッグになりますよ!

▼キエラ・キキ・シェアードの作品。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年06月22日 18:00

更新: 2006年06月22日 19:30

ソース: 『bounce』 276号(2006/5/25)

文/荘 治虫