WOLFMOTHER
70'sの黄金ロックの熱き魂を継承したオオカミたちが、シンプルで重厚なサウンドの詰まったデビュー作を携えて、音楽シーンに牙を剥く!
いま〈いにしえ〉のハード・ロック/ヘヴィメタルがにわかに支持されはじめている。しかも、その支持者の大半が当時を知らない、あるいはまだ生まれてもいなかった若者たちなのだからおもしろい。
例えば、7月5日にファースト・アルバム『Wolfmother』で日本デビューを飾るウルフマザー。ハモンド・オルガンやフルートの音色でサイケ風味も加えたブルース・ベースのハード・ロックを演奏するこの3人組が、現在本国オーストラリアのみならず、アメリカやイギリスでも大きな注目を集めている。つまりそれは、ディープ・パープル、ブラック・サバス、レッド・ツェッペリンといった70年代のブリティッシュ・ハード・ロック・バンドを思わせるレトロなサウンドが、逆に新しいと受け止められたということなんだろう。
「おい、ちょっと待てよ! いま〈レトロ〉って言っただろ? その言葉は物凄く了見が狭いと思うね。確かによく使われる言葉だけど、逆に教えてほしいよ。レトロって何だよ!? モダンって何だよ!? いまこの時代にしか作れない現代の音楽って言うんだったら、俺たちの音楽はめちゃめちゃユニークでモダンじゃないか! 確かに過去の音楽を参考にはしているよ。でも、解釈はいま現在の俺たちにしかできないものだぜ。それがつまりモダンってことだろ? 少なくとも俺はウルフマザーのことをレトロとは思っていないね」(アンドリュー・ストックデイル、ヴォーカル/ギター:以下同)。
なるほど、30~40代のリスナーには〈懐かしい〉音に聴こえるのかもしれない。しかし、ムーヴメントの担い手にとって、それは決して〈あの頃は良かった……〉的な懐古趣味などではなく、あくまでもいまだからこそ、いや、いましか奏でられない音なんだろう。
「だって、昔からあるアイデアや音楽性を今日の社会で通じる音楽にアップデートして、なおかつよりエキサイティングなものにしているんだぜ。俺たちの音楽ってリスナーの内側から野性を引き出すらしいんだ。プリミティヴな感性とか自由願望とか、そういうものが聴いているうちにどんどん引っ張り出されて、みんなが開放的になる。俺たちの音楽にはそういう力があるみたいなんだ。心も身体も動かす力って言うのかな」。
そこにハード・ロック/メタル復活の本質がありそうだ。つまり、これはロックが形骸化するときに必ず起こる原点回帰なんじゃないだろうか? 言い換えれば、ロックが多様化、あるいはトレンド化する過程で失われてしまった熱い芯を取り戻そうとする流れ。実際、アンドリューもまた、バンド結成以前はブリット・ポップ風のバンドやいわゆるシンガー・ソングライター・スタイル、それにエレクトロ・ポップ・ユニットなど、さまざまな音楽スタイルにアプローチしてきたという。
「でも結局、自分がいちばん得意なのはギターとベースとドラムでロックンロールをやることだったんだ」。
こんなふうに多くの若者たちが〈いにしえ〉のハード・ロック/メタルに、いまのロック――例えば、あまりにもトレンドになりすぎてしまったパンクやエモ、あるいはニュー・スクール系のメタルにはない熱いものを感じているのではないか? 60年代のビート・ロック、70年代のパンク・ロック、そして90年代のグランジ・ロック……それらと同じように語ることは早計かもしれない。しかし、ロック・シーンは確かに新たな局面を迎えつつあるようだ。
「考えてみろよ。原始の頃から人間って同じことやってるんだよ。愛し合って、ケンカして、セックスして、酔っぱらって……何ひとつ変わってないじゃんか! 結局、人間の欲求とか衝動とかなんて実にベーシックなんだよ。そして、音楽は常にそういうものを表現してきたんだ」。
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