インタビュー

Razorlight


「正直であるってことは、もっとも大事なことだね。それは4人全員に共通する信念だと思う。少なくとも音楽面では100%正直にここまできたと思うし。だってさ、少しでも偽りのあるアルバムを作ったら、それを持って2年もツアーできないよ、絶対に!」(アンディ・バロウズ:以下同)。

〈バンドにとって大切なこととは?〉という質問に対して、アンディは間を置かずにこう答える。〈ストロークス、リバティーンズ以来の大型新人〉として2003年にロンドンから現れたレイザーライトが、待望のセカンド・アルバム『Razorlight』を携えて帰ってきた。ジョニー・ボーレルによる〈俺は天才〉発言など、減らず口で常に話題を振りまき、時には敵(現在の喧嘩相手はクークス)も作ってしまう彼らだが、その奥にある〈真っ直ぐな心意気〉は今作においても変わることなく根づいている。

「自分たちとしてはゆっくりやっているという意識はなくて、実際に時間はあっという間に過ぎてしまったよ。満足できるものを作りたいという気持ちの表れかもね」。

 シングル“Somewhere Else”(アルバムには未収録)のリリースやチャリティー・コンピ『Help : A Day In The Life』に楽曲を提供していたものの、前作『Up All Ni-ght』から2年という期間をかけてじっくりと作られた今作。テレヴィジョンやトーキング・ヘッズといったNYパンク/ニューウェイヴの匂いのする退廃的なガレージ・ロックという基本は残しつつも、それを統制したように練り込まれたサウンドと、そして何よりポップでフックの効いたメロディーが耳につく。それも彼に言わせれば「自然の成り行き」だったようだ。

「確かにポップなアルバムだね。でも意図的なものは何もなかったよ。僕らのここ数年のあり方とか成果とか蓄積とかを正直に出したものがこの作品なんだと思う。作ってみたらこうなったって感じ。でも、前よりポップと言われて素直に嬉しいよ」。

 先行カット“In The Morning”の文字どおり夜明けを感じさせるような希望に満ちた雰囲気、“Hold On”の跳ねるようなビート、“America”の穏やかな風合いのメロディー……暗い影がちらつく彼らも魅力的だったが、総じて親しみやすい耳触りを得た楽曲は、新たな可能性を引き出している。

「ただひとつみんなで言っていたことは、〈長すぎるアルバムは絶対によそう〉ってこと。できる限りコンパクトにして、端的に自分たちの言いたいことを言う。聴いてる途中で寝られても困るからさ(笑)」。

 相変わらずの活況を見せるUKシーンにおいて押しも押されぬ人気選手となった彼らは、〈Live 8〉や〈グラストンベリー〉といった巨大フェスにあたりまえのように登場し、さまざまな大物アーティストと共演を果たしている。しかし、そんな急激な環境の変化に対して戸惑いはないのだろうか?

「〈普通の生活に戻してくれ~〉と叫びたくなることもあるけど、普段はとことん楽しんで、とことん満足しているよ。文句はない(笑)! それに、僕たちは基本的には何も変わらない。みんなが正直に自分たちのやりたいことをやっているだけだからね。ま、僕はフルタイムの仕事ができたってことで生活は激変したけど(笑)!」。

 正直に生きるということは、簡単そうに思えて実際はなかなか難しい。しかし彼らは迷いもなく真っ直ぐ突き進む。今作はそう強く感じさせるアルバムなのだ。 最後に、彼らが正直に生きていくためには何が必要なのかと訊ねてみた。

「それは簡単だよ。ジョニー、ビヨルン(・アグレン)、カール(・ダイレイモ)、アンディの4つに尽きるね。ひとつでも欠ければレイザーライトにならないし、この4つがあれば何でもできる! そうだろ?」。

 そのとおり! 自信たっぷりにUKシーンを大股で闊歩する。レイザーライトはそんなバンドであり、僕らもそういうバンドを求めているのだ。

PROFILE

レイザーライト
ジョニー・ボーレル(ヴォーカル)、ビヨルン・アグレン(ギター)、カール・ダイレイモ(ベース)、アンディ・バロウズ(ドラムス)から成る4人組。2002年の夏、ジョニーの呼び掛けによってロンドンで結成。2003年8月にシングル“Rock'n'Roll Lies”でデビュー。2004年4月にリリースされた4枚目のシングル“Golden Touch”でブレイクを果たす。同年6月、ファースト・アルバム『Up All Night』を発表。同作は全英チャート初登場2位をマークし、現在までに本国だけで100万枚を超えるセールスを記録している。その後、ドラマーの脱退を受けてアンディが加入。このたびセカンド・アルバム『Razorlight』(Vertigo/Mercury/ユニバーサル)をリリースしたばかり。

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掲載: 2006年07月27日 22:00

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/加賀 龍一