インタビュー

LETOYA


 デスティニーズ・チャイルドのオリジナル・メンバーとして華々しく活躍し、サード・アルバムのリリース前にラターヴィアと共にグループを脱退したラトーヤ。存続組のビヨンセ+ケリーによる凄まじいまでの〈サヴァイヴァー攻撃〉も記憶に新しく、当時は(安直な見方をすれば)勝ち組と負け組に分けられた感もあったが……どうやら答えを出すのはまだ早かったようだ。それどころか、彼女が披露する楽曲の完成度の高さを聴けば、あの騒動すら確実に彼女のプラスになっていると確信できる。ラトーヤ、満を持しての再出発だ。

「あんなムーヴメントの一部になれて楽しかったわ。若い時にあのグループに参加したことでいろいろ学べた。ヒット・アルバムを作るには集中力がなきゃいけないとか、成功するためには友達と遊びたいという欲求を抑えながら、朝6時に起きてヴォーカル・レッスンを受けるとか、どんなことでもしなきゃいけないっていうことをね」。

 2004年にデビューした男性シンガー、ヒューストンの作品にも参加していた彼女。その頃からソロ作発表の話題が挙がっていたので、今作は本人にとっても待ちに待ったものに違いない。「世界が初めてソロとしての私を知るわけだから、これ以上に相応しいアルバム・タイトルはないでしょ?」というファースト・アルバム『LeToya』では、スコット・ストーチをはじめ、ジャーメイン・デュプリやブライアン・マイケル・コックスら錚々たる面々がプロデュースに参加し、彼女の情熱と魅力を最大限に引き出している。スタイリスティックスの名曲“You Are Everything”をサンプリングした先行シングル“Torn”などでは、かつてデスチャ時代に“Bills Bills Bills”や“Say My Name”といったヒット曲で発揮され、いっそう磨き上げられたソングライティングの才能にも注目だろう。

「“Torn”はボーイフレンドのことをすごく愛してる女の子のことを歌ったバラードなのよ。彼女は彼と山あり谷ありの関係を切り抜けてきたのに、男のほうが大切にしてくれないから、彼女は人を愛する前にまず自分自身のことを愛さなきゃダメだと悟って、関係を続けるかどうかで悩んでいるの」。

 そんなリリックも女性には大いに共感できる部分ではないだろうか。その一方で圧巻のカッコ良さを誇るのは、マイク・ジョーンズとキラー・カイリオンをフィーチャーした“Gangsta Grill”。地元を愛するラトーヤのレペゼン・H・タウン宣言とも取れるヒューストン賛歌だ。

「この曲はまさにヒューストンの曲! 私もプロデューサーのTAも、マイク・ジョーンズもカイリオンもヒューストン出身なのよ。それに、スクリュード・アップ・スタイルをR&Bの曲に採り入れた女性アーティストはいままでいなかったから、これは新しい試みなの。スウィシャ・ハウスのマイケル・ワッツや、DJスクリューの音楽に出逢って以来、自分のアルバムには絶対このサウンドを入れたいと思ってたのよ。いつもジャムってた音楽だから」。

 他にも「私がクラブに行くときの気持ちを歌った曲」というポール・ウォール参加の“All Eyes On Me”や、ダメ男叱責系の曲、また誠実な愛を歌ったものまで……非常にヴァラエティー豊かな楽曲が詰まった内容の『LeToya』は、タイトルどおりラトーヤという人物像を色鮮やかに表現することに成功している。しつこいようだが、もはやいまの彼女に〈元デスチャの~〉などという枕詞は必要ない。その歌声からは、ひとりのシンガーとして活き活きとしている様子が伝わってくるのだから。

「また私の声を聴いてもらって、グループ外での私の活動も知ってもらいたい。それと、私に憧れてくれている若い女の子たちにこう言いたい。たとえみんながあなたのデスティニー(運命)からあなたを遠ざけようとしても、諦めちゃダメ、ってね」。

PROFILE

ラトーヤ
テキサス州ヒューストン出身。5歳から教会で歌いはじめ、小学校の同級生だったビヨンセらと共に8歳でデスティニーズ・チャイルドの結成に参加。97年のデビューから99年作『The Writing's On The Wall』でのブレイクまでグループに在籍するものの、2000年に正式脱退。翌年、共にグループを脱けたラターヴィアと新たにエンジェルを結成するが、作品のお蔵入りもあって解散。その後は地元でアパレル・ショップを経営して成功を収める。2004年にキャピトルとソロ契約を果たし、“U Got What I Need”でデビュー。ヒューストンやスリム・サグらの作品に客演しながらレコーディングを続け、このたびファースト・アルバム『LeToya』(Capitol/東芝EMI)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月10日 13:00

更新: 2006年08月10日 23:14

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/佐藤 ともえ