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インタビュー

音速ライン

ちょっぴり懐かしくてかなり切ないメロディー満載の新作が到着!! リスナーの涙腺を刺激する情緒豊かなサウンドを噛みしめよう!!


 高評価と好セールスをものにしたファースト・アルバム『風景描写』からわずか8か月、音速ラインがセカンド・アルバム『100景』をリリースする。ちょっと早すぎるってば!と思うのは、単純なタームの意ではない。音速ラインの楽曲は、時間に廃れることなく時代に色褪せることがない。「何年後に聴いても同じように聴こえる、同じ気持ちになれる、そういう音楽になりたい」(藤井敬之、ヴォーカル/ギター:以下同)と明言するように、いまこの瞬間も聴く人の心に映えていると思うからだ。とはいえ、この新作によってそんなふうに共に時間を過ごせる歌がまた増えたわけで。実に喜ばしい。

「もともと(胸を差しつつ)ここにウッッてくるメロディーが好きで。聴いてるだけで、わけもなく泣けてくるような……。それを自分でも作ってるんだと思うんですけどね。でもたぶんここ(心)で作ってるから、自分の曲を分析するのも説明するのも嫌い(笑)」。

〈ウッッ〉と胸にきて、そして沸き上がるのは誰もがいつかどこかで見知っている懐かしい情景、感じたことのある暖かく眩いノスタルジー。その情景と感慨を日々すくい取るために、藤井は生まれ故郷の福島に在住して音速ラインの音楽を発信し続けている。

「田舎にいて、自分がいちばんリラックスした状態じゃないと曲が出てこないっていうか。懐かしい感じっていうのも、田舎にいることでよりそれを感じやすいんです。神社があって子供が遊んでて、風が強い日には森がウワーッと騒いでて……〈あー、ちっちゃい頃こんな風景あったなぁ〉っていうような風景がすごく身近にある。だからもうずーっと作ってますね。暇さえあればギター持って、テレコに録って、聴き直してっていう。生活の一部なんですよ、歯磨きみたいなもんかも(笑)」。

 何気ない言葉、さりげなく情緒豊かなメロディー、ヘヴィーネスとエモーションが絡み合い颯爽と駆けるサウンド――そんな彼らの真骨頂はさらに精彩を放っている。

「最近ライヴでものすごい反応が返ってくるようになって、曲作ってる時に聴いてくれる人の顔が浮かぶようになったんですよ。前はそんなこと全然なかったのに。その点に関してはファーストとセカンドでは曲の作り方がガラッと変わったと思う。聴いてくれてる人をより意識するようになったというか。今回やたら歌詞に〈言葉〉と〈心〉っていうのが出てきて……無意識なんですけど。それは考えてみれば、やっぱ心と言葉とで何かを投げて伝えたいっていうところからきてるんだろうなぁ」。

『100景』とは〈音速百景〉、つまり聴く人が各々の思いを馳せて浮かべる、各々の情景へ手向けて名づけたという。あぁ、そうか。彼らが願うのは、その歌が私やあなたの生活それぞれに似合う彩りを与えること、なんだろう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月17日 01:00

更新: 2006年08月21日 14:32

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/山崎 聡美