インタビュー

GANGA ZUMBA


「コンセプトはなかったんだけど、意識革命はあった。MIYA(宮沢和史)のソングライティングに対する意識の違いっていうのもすごく感じたし、(レコーディングを)進めるときの作業の仕方もそう」(高野寛)。

 日本、ブラジル、アルゼンチン、キューバといった、それぞれの出自もキャリアも異なる多国籍バンド、GANGA ZUMBA(ガンガ・ズンバ)。宮沢和史(THE BOOM)のソロ・プロジェクト=MIYAZAWA-SICK BANDとして、ヨーロッパや中南米など世界中で活動してきた百戦錬磨のツワモノたちによって新たに結成されたバンドである。え、名前が変わっただけ? 彼らのファースト・ミニ・アルバム『HABATAKE!』を聴けば、そんな考えはどこかに吹き飛んでしまうはずだ。

「ルイス(・バジェ)に日本語で歌ってもらったらカッコイイなぁとか、ここは高野君に任せて……とか、全員の良さが出るものにしようというところがいままでの曲作りとちょっと違いましたね。バンドのため、そしてステージでどれだけ輝ける曲があるか」(宮沢)。

 ライヴを、そしてオーディエンスとの交歓をより意識し、タフなバンドへと変化を遂げた本作のキーワードは、〈ダンス・ミュージック〉。ブラジリアン・パーカッションの軽やかなアンサンブルとライヴでのコール&レスポンスも意識したコーラスを配したタイトル曲、〈マンボ+ボレロ〉な趣きの淫靡な雰囲気が充満した、彼らならではのオルタナティヴなラテン・ナンバー“Mambolero”、また「僕らの姿勢、〈ミクスチャーだけどちゃんと日本発〉みたいなものが上手く表現できた」(宮沢)という“Bridge”は、その言葉どおりレゲエをベースにしながらもメロディーや歌詞の世界観は〈和〉だったりするからおもしろい。

「全然、俺なんかレゲエのリズム叩いてないからね。いい意味で間違っていたい。レゲエっぽく演奏するんではなくて、もっと突き詰めて、〈この曲に合うのはこっちのリズムだ〉ってさ。ラテン音楽をベースにしてると思われるかもしれないけど、でも、肌触りが冷たい曲もあるでしょ? そのへんが、ほかにはない音になってると思う」(GENTA)。

 また、この10人のクルーを乗せた船に今回、途中から乗り込んできたのがMISIA。彼女のアルバム『SINGER FOR SINGER』に宮沢が楽曲提供して以来、「いつかいっしょにやりたかった」(宮沢)というラヴコールが実り、“Survivor”には彼女の伸びやかな歌声がフィーチャーされている。

「MISIAの歌が入った瞬間に温度が上がった。スピード感とか強さみたいなものとか……歌声が飛んでいくのが見えるような感じ」(高野)。

 実は、今作に入りきらなかった曲や制作中の楽曲もすでに多く、バンドは現在進行形で動き続けている。それぞれに充実したキャリアを積んだメンバーたちが、変幻自在にフォーメーションを変えながら直感で突き進み、さらなるサプライズへ。

「なまじ僕らの個々の活動を知っている人は〈スーパー・セッション〉みたいなものを想像するかもしれないけど、そうじゃないので。流れのなかでこうなっていったっていうのは大きいよね」(高野)。

「自分たちの身体から出る息遣いであったりとか、肉体のバランスであったりを調整しながら、めちゃくちゃアナログな方法でレコーディングして。そういうアルバムをいまの時代に発表するって、すげえなって思うんだよね」(GENTA)。

「楽観的でも悲観的でもなく、何かを信じてみんなで力を合わせて、〈あいつらすげえとこに行ってんなぁ、俺たちもそっちに行ってみてえなぁ〉って思われるような音楽をやりたいですよね。このメンバーだったらできると確信しているし」(宮沢)。

 はい、もちろん僕も〈そっち〉に行ってみたいわけですよ!

PROFILE

GANGA ZUMBA
THE BOOMの宮沢和史(ヴォーカル)、GENTA(ドラムス)、tatsu(ベース)、高野寛(ギター)、今福“HOOK”健司(パーカッション)、マルコス・スザーノ(パーカッション)、フェルナンド・モウラ(キーボード)、ルイス・バジェ(トランペット)、クラウディア大城(ヴォーカル)、土屋玲子(ヴァイオリン)から成る10人組バンド。もともと宮沢のソロ作やツアーに参加していた各メンバーがMIYAZAWA-SICK BANDとして結集、2005年にはヨーロッパや中南米10か国でライヴ活動を展開。2006年4月26日の東京・SHIBUYA-AXでのライヴを機にバンド名をGANGA ZUMBAへと改名。8月2日にファースト・ミニ・アルバム『HABATAKE!』(Rhythmedia Tribe)をリリースする予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年08月24日 22:00

更新: 2006年08月24日 22:45

ソース: 『bounce』 278号(2006/7/25)

文/佐々木 俊広