インタビュー

らぞく

この夏日本中を荒らしまくった、ウワサのジャム・バンドがついにヴェールを脱いだぞ!


 細分化されたジャンルの壁が、延々とインプロヴァイズされるセッションの熱で溶け出し、新しい音楽へと形を変えつつある――まさにその瞬間に僕たちは立ち会っているのかもしれない。結成10年目にして、初のフル・アルバム『JOYSTREEM』を完成させた湘南・藤沢発の3人組ジャム・バンド、らぞくの自由極まりない音楽には、聴き手を昂揚させる未知なる刺激が詰まっている。

「高校生の時に聴いていたのは、スティーヴィー・レイ・ヴォーンやジミヘン、バンドだとオールマン・ブラザーズ(・バンド)、それと並行して、みんなはヘヴィーメタルも聴いてましたね。そのへんの音楽ってソロが長いし、ノリで演奏したかったから、当初はサイケデリック・メタルみたいな感じだったんですけど、ディストーション・サウンドがクリーンになったり、ガット・ギターを使うようになったりした時期を経て、いまのサウンドに落ち着いたっていう経緯があるんです。やってることは向上しつつ、基本は変わらないですね」(越野竜太、ギター/ヴォーカル)。

 70年代のUS西海岸産のロックにあったレイドバック感と近いものがあるという地元の生活やその音楽環境に多大な影響を受けているという彼らは、年間100本を超えるライヴでアーシーなブルース感と海沿いの街特有の抜けの良さを育んできた。

「一時期は徹夜の練習を週3回とか。夜の11時にスタジオ入りして、ほとんど休憩なく朝の7~8時まで。最高で16時間とかやってましたよ。ちなみにライヴは最高で、藤沢のバーでの9時間。客がバタバタ倒れて、みんな倒れたから止めたっていう(笑)」(大角兼作、ドラムス)。

 熱くファンキーに、はたまた、クールでメロウに、ロックからジャズ、ダブからサーフ・ガレージへと、滑らかにサウンドスケープを変化させつつ、楽曲そのものはポップにしてピュア・クリーンで、実に人懐っこい。環境と生活と人と音楽。それらが分かちがたく結びついているからこそ、その佇まいはナチュラルだ。

「このバンドは3人の自由な発想で成り立っていて、仮にそれが離れても、ちゃんと戻ってくる。なんたってこの10年、家族的にやってきましたからね。音にその関係性が表れているんじゃないですかね」(加藤ぶん、ベース)。

 本作をひとつの雛形に、今夏の〈フジロック〉や〈渚音楽祭〉ほか、日々繰り返される大小のライヴで支持を集める彼ら。安易な形に寄りかからず、3人の信頼関係を頼りに進む彼らの前に遮るものは何もない。

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掲載: 2006年08月31日 22:00

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/小野田 雄