こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Basement Jaxx

最強のビッグ・パーティー請負人たちが、ポップで多彩なサウンドの詰め込まれたラジオを開局!?


 ほんとにこの人たちは、タブーとか限界とかって価値観とは無縁なのだなあと最近しみじみ感じている。というのも、ベースメント・ジャックスの2人はこの夏、なんとロビー・ウィリアムスのオープニング・アクトとしていくつものスタジアムに登場しているのだ。いや、ベースメントも前作『Kish Kash』でグラミーを受賞しているからもはやマイナーな存在ではないのだが、アンダーグラウンド/オーヴァーグラウンドに関してまったく線を引いてない彼らだからこそ、さっくりとロビー・ファンをも踊らせることができるのだろう。

「まあ、5万人の前でライヴをやってみたかったんだよね。そもそも僕らがハウスDJだったのは昔の話さ。ここ数年は〈バンド〉という意識が強いんだ。もっとも、出自が普通のロックじゃなく、ダンスだっていうところは違うと思うけど。で、ライヴに力を入れはじめてから、ロック・ファンは俺たちのことをロックの一種として認識してくれているし、その一方でダンス・ファンは踊れるライヴとして喜んでくれる。つまり、〈DJやダンスの世界〉だけとか、〈ロックの世界〉だけとかじゃなくて、こうした個性的な立ち位置にいることが俺たちには大切なんだ」(フィリックス・バクストン:以下同)。

 その言葉は、そのまま彼らのニュー・アルバム『Crazy Itch Radio』にも通じるように思える。何しろ、アルバム丸ごとをひとつのラジオ番組という体裁にしたこの作品、極論を言えば彼らが何をしてどんな道を歩んできたかをまったく知らずとも、ワハハと楽しめる強烈なポップ・ソングが揃っている。もっとも、ひとつひとつの曲を紐解けば目からウロコの連続だ。現在のヨーロッパのハウス・シーンを映したミニマルなトラックもあれば、ソウルな歌モノ曲にはさらっとリンダ・ルイスが参加してたり。とはいえ前作よりも肩の力が抜け、デビュー作『Remedy』の持っていたソウル色に近い。まあ、〈ソウル・アルバム〉と言い切るにはあまりに多種多様な音がアゲ感を生み出していて、それこそベースメント印なのだが。

「ポップでもヒップホップでもテクノでもない〈ベースメント・ジャックス〉というジャンルだよね、もう。そこで勝負できるようになってきたのが嬉しいよ」。

 確かに、どんなタイプの音でも呑み込んではポップに吐き出す力量がなければ、さまざまな曲がかかる〈ラジオ〉なんて体裁の作品は作れないわけで。で、実力があるから、エンターテイメントに徹しても深みが生まれて……たまんない。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年09月14日 13:00

更新: 2006年09月14日 19:43

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/妹沢 奈美