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インタビュー

PARIS HILTON


〈けっこういいじゃん〉〈意外にイケてる〉〈見直しちゃった〉……などなど、いろんな褒め言葉が飛び交うパリス・ヒルトンのファースト・アルバム『Paris』。驚くのは失礼かもしれないが、これがマジでホントによく出来ている。〈世界でいちばん有名な新人アーティスト〉という謳い文句に笑いつつ、〈でもいったいパリスって何をやる人?〉〈どこぞのホテル・チェーンの令嬢とかいって、所詮はチャラチャラ遊んでるだけなんでしょ?〉などと思っている世間の人々も、今作での本気ぶりには驚くことだろう。インタヴューにも熱意を持ってきちんと応えてくれた。

「世界中を回っていろんなクラブで遊ぶようになってもう長いから、クラブ・ミュージックの定番はわかっているし、どういう曲がカッコいいのかもわかっているわ。自分のアルバムを作ろうと考えた時、まずは自分が好きな曲を全部聴き返して誰がプロデュースしていたのかを確かめたの。そうしたら全部スコット・ストーチが手掛けていたのよね」。

 スコット・ストーチといえば、ビヨンセから50セント、クリスティーナ・アギレラ、クリス・ブラウンまでを手掛ける、間違いなくいまもっともホットなプロデューサー。彼に目を付けるあたり、ただの遊び人じゃないパリス。やるからには一流に、というのがやはりセレブの血統書付きたる証だろう。

「スコットは天才だし、業界のなかでも最高のプロデューサーよ。音楽を聴き分ける耳を持っている。彼のいるマイアミに2か月間滞在して、毎晩ふたりで朝の5時くらいまで仕事をしていたわ。“Fightin' Over Me”という曲では、ファット・ジョーとジェイダキスが参加してくれてすごく楽しかった。マイケル・ジャクソンがポール・マッカートニーとやったみたいに、ひとりの女性を奪い合ってるの。ふたりが私を奪い合うっていう曲をヒップホップ・ヴァージョンでやったらおもしろいんじゃないかと思ったのよ」。

“I Want You”という曲ではジョナサン“JR”ロテムを起用。大ヒットしたリアーナの“S.O.S.”にソフト・セルの“Tainted Love”が上手く組み込まれていたように、ここでは映画「グリース」のテーマ曲が挿入されている。

「すごくクールでしょ!? 〈グリース〉は子供の頃から大好きだったし、聴き慣れたフレーズだからみんなにも気に入ってもらえるんじゃないかしら。リアーナの“S.O.S.”も、80年代に流行したあの曲を思い出させたからヒットに繋がったんだと思うわ。昔の曲をそうやって再生させるのってクール! 次のアルバムではマッシュアップを本気でやりたいと考えてるところなの」。

 さて肝心の歌はといえば、良くも悪くもパリスらしいというか、パリスが描くパリス・ヒルトン像といったところ。つまり肩に力コブが入っておらず、ヘラヘラ、フニャフニャ。でもそれがパリスらしくて、いかにもクラブでポーズを付けて踊っているふうなのだ。歌詞の内容も〈Boy Meets Girl〉といった甘酸っぱいものがほとんど。ギター・ロックな“Nothing In This World”や早くからネットに流出していた(させていた?)“Screwed”にしても、カリフォルニアの青空を仰いでドライヴしているかのようなフィール・グッドな雰囲気。ただ1曲を除いては……。“Jealousy”という曲は、いまや犬猿の仲となったニコール・リッチーに宛てて歌われている。

「嫉妬というのは邪悪な感情。神様は優しい心の人にカルマを与えるの。私は一度も嫉妬したことがないわ」とのこと。カルマが与えられるかどうかは知らないが、セレブ・ライフのお裾分けなら、しっかりこのアルバムで満喫できそうだ。

PROFILE

パリス・ヒルトン
81年2月17日生まれ、NY出身の25歳。ヒルトン・ホテルの創業者を曾祖父に持ち、幼い頃から妹のニッキーと共にモデル/タレントとして活躍。一方で、サマンサタバサのバッグ・デザイナーを務めたり、香水ブランドを立ち上げたり、フォト・エッセイ集「Confessions Of An Heiress」では執筆に挑戦したりと、多岐に渡る活動を展開している。2004年に映画「蝋人形の館」でスクリーン・デビュー。2005年にワーナー・ブラザーズと正式に契約を交わし、同年5月頃からLAやマイアミのスタジオにてレコーディング作業を開始。デビュー・シングル“Stars Are Blind”が本国USで話題を集めるなか、このたびファースト・アルバム『Paris』(Warner Bros./ワーナー)をリリースしたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2006年09月14日 14:00

更新: 2006年09月28日 22:39

ソース: 『bounce』 279号(2006/8/25)

文/村上 ひさし