インタビュー

Kaskade

ビューティフルでグルーヴィーでメロディアスで……ミステリアス! 貴公子が紡ぎ出す流麗な美メロ絵巻に乗って、世界中の夜はまたしても愛で満たされる!?


 ほんの少し前までオムといえば、マーク・ファリーナらによる西海岸特有のディープでユル~いハウスやブレイクビーツをイメージすることが多かったけど、少なくともここ最近の日本では〈スタイリッシュなハウス・レーベル〉という認知がセッティングされている模様。そんなイメージ刷新の張本人こそ、このカスケイドことライアン・ラドンでしょう。その影響はオムのみに止まらず、〈乙女〉〈美メロ〉〈胸キュン〉などのカテゴリー形容がハウスに与えられ、艶やかなメロディーを搭載したライトでキャッチーなトラックが日本で軒並み大ウケするようになった背景にも、彼の功績は大きいはずです。そんななか、今年4月に行われたイヴェント〈OM TOKYO〉への登場によってそのアイドル人気(?)を改めて証明したオリジネイターが、2年ぶりとなる新作『Love Mysterious』をいよいよリリースすることになりました。

「いろんな人たちに〈どうしてラヴソングを書くの?〉って訊かれていて、レコーディングを始めた頃に、〈Love〉の意味について深く考えたんだ。その結果、〈Love〉は人によってそれぞれ違って、本当にミステリアスで不思議なモノだってわかったんだ!」。

 タイトルの意味について、このように(よくわからない)説明をしてくれるライアンだけど、そんなことよりも驚きなのは、彼がかつてA&Rとして勤務もしていたオムを離れて(ラトリスもリリースする)ウルトラに移籍していること。ただ、ライアンいわく「何か新しい方向へ動きたいと思ったから契約したんだ。ウルトラは僕の音楽をリスペクトしてくれるしね」とのことで、特に大きな理由はなさそう。スタジオの場所が変わったぐらいで制作プロセスなどにも大きな変化はないそうで、サウンドの感触も、基本的に前作『In The Moment』を踏襲した安定感バツグンの仕上がりです。自身が望まれているポイントをしっかり理解しているということなのでしょうか?

「はっきりわからないけど、みんなが僕のソングライティングのスタイルに魅力を感じてくれてるんだとは思うよ。前作では“Steppin' Out”の評価が高くて凄く嬉しかったんだ。だから、ああいう曲をもっと書こうってインスパイアされたところはあるな。今回も自分の気持ちや感情を伝えることと、常に正直でいることに重点を置いて仕上げたよ」。

 とはいえ、一瞬カイリー・ミノーグの某曲かと思わされてしまう“Be Still”のように超キャッチーな美メロ曲がある一方で、エレクトロ・ハウス風の“All You”のような新機軸も用意されています。リスナーに安心感を与える普遍性の深化とアーティストとしての自然な進化を、どんなバランスで考えてるのですか?

「クラブ・ミュージックのファンはジャンルをミックスして捉えていると思うし、僕も良い音楽を作ることに集中するだけさ。キミの言うように、エレクトロ風の楽曲もプロデュースするという選択をしたわけだけど、スタイルそのものよりも、僕が楽曲で言いたいことを伝えるうえで、どういうトラックを選択するかってことが重要なんだよね」。

 そんな多彩なトラックで華麗な歌声を披露してカスケイドの世界観を共に構築するのが、馴染みのジョスリンやベッキー・ジーン・ウィリアムズ(ライアンもメンバーに名を連ねるレイト・ナイト・アラムナイのシンガー)といったヴォーカリストたちです。

「曲を作ってアイデアを出した後、誰がそのトラックに合うかを考えるんだ。ジョスリンやベッキーの他、友達が持っていたCDで歌っているのを耳にしてオファーしたマーカス・ベントレーもいるよ。凄く良い仕上がりでとてもハッピーさ」。

 そんなわけで『Love Mysterious』は、従来のファンを裏切らず、またしても新しいリスナーを獲得しそうな大満足の仕上がりに。あとは今作を引っ提げての再来日に期待したいところですが、「日本は大好きだ。オーディエンスも音をわかっているし、いつもとても良い時間を過ごせるから、また日本でプレイできるのを楽しみにしているよ!」との言葉からして、そう待たされることはなさそうですね。
▼カスケイドの作品を紹介。

▼カスケイドの参加した作品を一部紹介。

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掲載: 2006年09月28日 19:00

更新: 2006年09月28日 22:20

ソース: 『bounce』 280号(2006/9/25)

文/高橋 玲子