インタビュー

浅井健一

日本のロックを牽引し続ける男が初のソロ・アルバムをリリース! 清冽で危険すぎる世界観をギターと歌で聴かせる大傑作の誕生だ!!


「自分の歌への新しい発見は……あったよ。肩に力が入ってたんじゃ本来の自分になれないから、肩に力入れたらいかんっていうことを発見したな……(笑)。あったりまえのことなんだけど。いままで?……入ってたねぇ、やっぱ何千人も前にしたら普通肩に力が入るわな。けど、そこで(力を)抜くことができる人間かどうかっていうところでも問われてるんだろうな。いまそれができる心持ちになったっていうのは、そんだけの自信がないとやっぱり固くなっちゃうから、いまの曲にはすごい自信がある」。

 なんてニュートラルなんだ。今夏、茂木欣一(東京スカパラダイスオーケストラ/フィッシュマンズ)や盟友である照井利幸とのセッションによる、緊張感漲るフィジカルなロックンロール・サウンドで僕らを撃ち抜いたシングル“危険すぎる”を序章に、キャリア初となるソロ活動の幕を開けたベンジーこと浅井健一。SHERBETS、JUDEとアグレッシヴにバンドを率い、さらに現在はソロという止まることのない創作意欲で精力的に突き進みながらも、冒頭の発言のようなニュートラルさで、人も物事も、さらにみずからの心さえも真っ直ぐに捉える彼の眼差しに改めて驚き、そして納得できた気がした。浅井健一名義のファースト・アルバム『Johnny Hell』は、そんな澄んだ眼差しで世界を捉えるベンジーだからこそ作り得た作品なんだ、と。本作では、とても彼らしいやり方で、これまで以上に研ぎ澄まされた、現在の世界に対する警鐘が鳴らされているように思えてならないのだ。

「あぁ、そうかもね。自分のなかではそんなふうには全然考えてないけど。でも、危機感はあるよ。いまの日本を見てると〈この国はなくなっちゃうんじゃないのかな〉と思ったり。自分の故郷がなくなるのはイヤでしょ?」。

〈全校生徒 一人/教室は 世界全部〉という〈Windy and Black merry go round school〉で〈すべては風から知れよ〉と歌う“RUSH”をはじめ、本作ではイマジネーション豊かに描かれる静かな筆致の優しいストーリーが、みずからのルーツであるロックンロールを血肉とした鋭利なビートとメロディーに乗っていくつも奏でられ、紡がれていく。澄明で清冽な魂を宿して生きる各曲の主人公たちは皆、浅井健一という人間自身の代弁者なのであろう。

「でも、みんなが思っとるほど別にヘヴィーじゃないんだよね。なんか……スッとしとる、というか。どえりゃあ思いが込もっとると思われがちなんだけど、ただ自分を表現してるんだと思うんだよね、最近気がついたんだけど。〈曲で何かを伝えよう〉じゃなくて、〈自分を音楽で表現してる〉っていうだけなんだ」。

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掲載: 2006年10月12日 00:00

更新: 2006年10月26日 22:37

ソース: 『bounce』 280号(2006/9/25)

文/山崎 聡美