インタビュー

鈴木正人

ジャンルを越えて活躍する人気プロデューサー/ソングライター/ベーシストが初のソロ・アルバムを完成!


 LITTLE CREATURESでデビューして以降、畠山美由紀やLeyonaといったシンガーのプロデューサーとして確かな地位を築き、またベーシストとしても南博トリオや菊地成孔、小沼ようすけなどの数多くのセッションに参加してきた鈴木正人。初のソロ・アルバム『UNFIXED MUSIC』は、そんな彼のカテゴライズされない活動の賜物だ。

「人ありきのところで、最初に〈この人とやりたいな〉っていうのを決めてから曲を作りはじめたんです」。

 インプロ色の強い内橋和久&外山明とのトリオと、構築度の高い芳垣安洋、塩谷博之、青木タイセイらとのグループを率いて、プレイヤーたちの〈気配〉を捉えながら音を積み重ねていく。今作はそんなプロデューサーとしての才覚に満ちた作品であるのと同時に、夜ごとジャズ・クラブでのストレート・アヘッドなプレイを続けているウッドベーシストのリーダー作でもある。

「ただ最初から最後まで即興ではなくて、入り口と出口を、ある決まったメロディーを提示して、そこから先はどうなるかわからないっていうやり方をしたほうが、僕がやる意味があるんじゃないか、というか」。

 興味深いのは、UAと青柳拓次という旧知の友を迎えたヴォーカル曲でとりわけ感じられる、彼独自の芳醇なメロディーセンスだ。

「オーネット・コールマンとかエリック・ドルフィーのメロディーには、普通のジャズのフォーマットに収まりきらない、もっとプリミティヴな感覚があったりして。ある時期からそういうものがおもしろいと思えるようになったんですよね」。

 ジャズのイディオムを絶妙にずらした、奇妙なしなやかさと親しみやすさを持つ音楽に、かつてのニューウェイヴが持っていたスリリングな匂いと、ルーツ・ミュージックへの憧憬の双方を感じるのは決して間違いではないだろう。

「いつもあんまり〈今の気分はこれ〉というのはないんです。でも生楽器のおもしろさを発見したいという気持ちはずっと変わっていないのかな」。

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掲載: 2006年12月21日 17:00

更新: 2006年12月21日 23:20

ソース: 『bounce』 282号(2006/11/25)

文/駒井 憲嗣