インタビュー

キャプテンストライダム


  何しろ胸がすくのだ。もしあなたがキャプテンストライダムに〈ポップ技巧派〉というイメージしか持っていないなら、いますぐニュー・アルバム『BAN BAN BAN』を聴いてみてほしい。

「〈キャプテンストライダムというバンドで作り上げたアルバム〉という意識が凄く強くて。前の『108DREAMS』は〈いかに歌を聴かせるか〉っていうのがいちばんのテーマだったんです。今回は演奏しているときの〈ビビッ〉とくる感じを凄く信じて作ったというか。自分たちがいちばん楽しく演奏できる、それを出せれば聴いてくれる人は絶対に同じ感じを共有できるんじゃないか、と思って」(菊住守代司)。

 数多のバンドのなかでも、とりわけソング・オリエンテッドな印象のあった彼ら。打ち込みなどの実験的な要素を豊富に盛り込んだ『108DREAMS』に続いて発表された、これまたポップに振り切ったシングル“風船ガム”が、ラフで骨太な印象のこのアルバムに向かうきっかけになったのだという。

「その頃言われていたのが、〈作品のイメージとライヴのイメージが違いますね〉ってことで。トッド・ラングレンじゃないですけど(笑)、ライヴもレコードみたいにけっこう作り込んで再現するのかと思いきや、意外とワイルドなんですね、みたいな。それまではライヴと作品とは意識を分けて別の楽しみ方を提示したい、というのがあったんです。音楽マニア的なところがあるので、どうしても細かいところを見がちだったんですけれど、今回は作品でもライヴに負けない迫力があって、僕らの姿が見えるものを作りたいなって」(永友聖也)。

 ライヴ・パフォーマンスを観ていただければ一目瞭然だけれど、もとより彼らは70年代ロックから、サイケ、ソウルなどさまざまな音楽性を咀嚼していくタフなバンドであった。が、現在ライヴのサポートも務めているプロデューサーの久保田光太郎と共同で、バンド・サウンドを作り上げていくために繰り返されたチャレンジは、彼らの音に対する意識も少し変えたようだ。

「アルバムもそれぞれの曲もそうなんですけれど、例えば〈ペラペラでOK〉(“ペラペラ”)という〈これだ!〉ってフレーズが一言あれば、それに向かって言葉の乗り方とかを頭で考えて計算して、っていうよりも、グルーヴを大事にしていったんです。みんなの演奏が折り重なって作り上げていく感覚をいちばん大事にしたので、すごく鮮度の高いサウンドになったと思います」(梅田啓介)。

 その最たる成果である、バンドと久保田の共同クレジットによる“クリーンタウン”と“長い坂の登る途中”がそれぞれオープニングとエンディングに収録されているのも、彼らの自信の表れであろう。

「レコーディング前に、〈曲の耳触りがどういうものになるのか〉ということをみんなで徹底的に確認したんです。それがどういう演奏になっていくのか、ということに繋がっていって、その話があったからイメージがブレないんですよね。目的地をみんなで見つけて、そこに向かって自由に走っていく。そこが凄くおもしろかったし、自分にできることってなんだろうって、プレイに確信が持てたんですよね」(永友)。

 モヤモヤとしたやり切れない気持ちをそのまま音の塊にした“アナグルマ”やレゲエのリズムなど多様なイメージが交錯する“COME'ON COME'ON COME'ON”もあるが、総じてけれんがなく、力強い。そしてもちろん、彼らの甘酸っぱいメロディーやドキドキする感じというのは、やはりキャプテンストライダムらしいロックの香りとして芳醇に漂ってくる。

「僕はやっぱり〈歌〉が好きなんですよね。言葉だったりメロディーに負けないくらい、バンドの音でも語っていて、なおかつちゃんと歌が聴こえてくる演奏にしたい。そういう立体的な音になったらもっと楽しいんじゃないかって」(永友)。 

 心が晴れる抜けの良さと、並外れたエンターテイメント精神(“LONE STAR”のプロモ・クリップを観てみて!)を武器に、キャプテンストライダムのユニークな独創性は止まりそうもない。

PROFILE

キャプテンストライダム
永友聖也(ヴォーカル/ギター)、梅田啓介(ベース)、菊住守代司(ドラムス)から成る3人組。99年に大学の音楽サークルで出会った永友と梅田がバンドを結成。翌年には菊住が加入して現在の編成となり、宇都宮を拠点に活動を本格化。2002年には松本隆が主宰するレーベル=風待と契約し、2003年にデビュー・シングル“マウンテン・ア・ゴーゴー”とファースト・アルバム『ブロッコリー』を発表する。2004年に活動の拠点を東京に移すとコンスタントにシングルを発表し続け、2005年にセカンド・アルバム『108DREAMS』をリリース。今年2月のシングル“LONE STAR”を経て、3月7日にニュー・アルバム『BAN BAN BAN』(Yeah! Yeah! Yeah!)をリリースする予定。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年03月22日 13:00

更新: 2007年03月22日 20:59

ソース: 『bounce』 284号(2007/2/25)

文/駒井 憲嗣