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インタビュー

Bebel Gilberto

新世代ブラジル音楽のミューズが、セルフ・プロデュースで鮮やかな飛躍を遂げた!


  ボサノヴァやサンバ、エレクトロニカなどが手を取りつつスキップする――モダン・クラシックな造りのベベウ広場では、いつもそんな素敵でシアワセな光景が見られる。スバやスモーク・シティらがその門出を祝福したデビュー作『Tanto Tempo』から、マリウス・デ・ヴリエスやカルリーニョス・ブラウンらが参加した『Bebel Gilberto』を経て、その広場は次第に綺麗な花で埋まっていったわけだが、この約3年ぶりの新作『Momento』が誕生し、その場所にはよりカラフルな色彩と気品が加わった印象。さて、グラミーにもノミネートされた前作を経ての新作ってことで、制作時の心模様はどんなものだった?

「実際のところ、前作を作るときのほうが断然プレッシャーを感じたわ。今回のレコーディングはある意味簡単で、すべてが楽しかった!」と答える彼女。ふむ、〈以前よりも自信や度胸がついたわよ〉って意味ね。作品のカラーをより豊かに広げるコーラスの充実、キャッチーなポップさとルーツ色の取り混ぜ方の見事さ、エレクトロニクスとアコースティックな音のバランスの良さなど、前2作を上回る点は多い。ここで特記すべきは、多くの曲を彼女自身がプロデュースしていること(ビョークなどを手掛けるガイ・シグスワースも4曲を担当)。

「プロデュースをするときの私は、まるで小さなひな鳥を監視しているママ鳥みたいな感じ(笑)。初めての一歩や鳴き声、初めてのジャンプをそっと見守りながら観察しているような、ね。自分の歌だけど、(プロデュースするのは)とっても難しい! でもじっくり取り組みつつ、感情的にならず、機能的に歌う方法を学んでる」。

 未知なる新鮮な世界のイメージと、愛すべき過去(=ルーツ音楽)へのオマージュを結び付けながら、懐の深いコンテンポラリー・サウンドを作る彼女だが、今作でのバランス感覚の良さは母性的な観察、熟視によってもたらされたってことか。そんな彼女がいま気になる人は、ノラ・ジョーンズとシャルロット・ゲンスブール(「彼女の最新作『5:55』は最高!」と興奮した口調で話してた)だそう。なるほど、先に述べたベベウの音楽へのアプローチは、この2人の作風とも緩やかに重なり合うか。

 さて、今作はロンドン、NY、リオデジャネイロでレコーディングされた。コスモポリタンの彼女らしいスタイルだが、どうだろう、次は1か所に腰を落ちつけてアルバム制作なんて形は?

「あぁ、それもアリかもね。でもレーベルには内緒よ(笑)!」。
▼関連盤を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年03月29日 20:00

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/桑原 シロー