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インタビュー

KARIZMA

低く、太く、黒く、硬く、官能的に、容赦なくうねるグルーヴの奔流! ダビーなヴァイブとテック・ビートを携えて、その名のとおりのカリズマがフロアに降臨!!


 今年の大きな飛躍が期待されているアーティストのひとり、ボルティモア出身のカリズマことクリス・クレイトンが、ファースト・アルバム『A Mind Of Its Own』をリリースした。カリズマといえばハウス・ファンにはお馴染みの存在。ここ数か月だけでも、ディフェクテッドの『Defected Presents Urban House』、ケリー・チャンドラーの『Coast 2 Coast Vol.2』、長谷川賢司の『Love Generation』など、ミックスCDやコンピでトラックが引っ張りだこになっている人気クリエイターである。彼が注目を集めたきっかけは皆さんもご存知、同郷のプロダクションであるベースメント・ボーイズへの参加だ(現在は離脱)。DJ/プロデューサーとして活躍し、DJスペンと共に数々のリミックス・ワークもこなしてヒットを量産してきた。

「メンバーになる前から彼らのことはずっと知ってて、スペンとは話したりしてたんだ。ジャスパー・ストリート・カンパニーのアルバムにトラックを提供したり、メアリーJ・ブライジの“Beautiful”のリミックスをいっしょにやったり、後は知ってのとおりさ」。

 そのような経緯もあって長らく待たれていた『A Mind Of Its Own』は、彼のソウルフルで黒いプロダクションを活かしつつも、アフロ/ラテン/ブレイクビーツ/テクノ/ジャズがクロスオーヴァーしたアーティスティックなサウンドが展開され、彼の豊富な音楽的バックグラウンドを垣間見せている。

「幅広い音楽が好きなんだ。これはお祖母ちゃんの影響さ。彼女はジャズやビッグバンド、ゴスペル、カントリー、クラシックといろんな音楽をかけてくれたからね」。

 アルバム収録曲中、プロモ盤アナログがごく一部にしか出回らなかったのに大反響を呼んでいるのが、テッキーなブロークン・ビーツ“Twyst This”だ。バグズ・イン・ジ・アティック、ベン・ワット、沖野修也らの支持を獲得した同曲は、ジャイルズ・ピーターソンの人気ラジオ・プログラム〈Worldwide〉において、正規リリース前にもかかわらず〈年間ベスト・シングル〉の14位に選出されるほど!

「まったく想像してなかったけど、聴いた人が何かを感じてくれるのは嬉しいよ。だってさ、これは本当にオレの心から出てきたものだから」。

 他にも本作には興味深い曲が満載だ。流麗なシンセが特徴のアトモスフェリックなハウス・トラック“Tha D”、躍動感のあるピアノとディープなベースが絡み合うブレイクビーツ“The Damn Thing”、ダビーで深いベースラインが陶酔感をもたらす4つ打ちの“All Teched Out”など、ベースメント・ボーイズ時代からは想像し難い曲が揃っている。

「いままでもひとつのスタイルに留まることはなかったよ。常にできるだけ限界を押し進めようとしてるんだ」。

 質問に対して淡々とした返答が多く、必要以上に語ってくれないカリズマだが、そんな簡素な発言の端々からも、本作に対してすべてをやり尽くしたという自信が汲み取れるだろう。

「何も思い留まることなく作れたから、今作のことは誇りに思っているよ。皆に気に入ってもらえるアルバムを作りたいという思いと同じくらい、とにかく何かを外に向けて出したいという意志が強かった。この先の人生で何の後悔もしないようにね」。

 彼の充実ぶりが窺えるこの言葉。しかしまだまだ休むつもりはないらしく、創作意欲はますます燃え盛っているようだ!

「ソウル・インテンションや、デニス・フェラーとのプロジェクトなどに取り組んだら、俺の次のアルバムに取りかかるよ。今度は知り合いのヴォーカリストやミュージシャンなんかも起用する予定なんだ」。
▼関連盤を紹介。


ジャスパー・ストリート・カンパニーの編集盤『Collection』(Basement Boys)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年04月05日 17:00

更新: 2007年04月05日 18:33

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/青木 正之