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インタビュー

Fountains Of Wayne

パワー・ポップがふたたび元気を取り戻しつつあるこの時期に、シーンの顔役とも 言える彼らがおよそ4年ぶりにニュー・アルバムを投下する!


 NY出身の4人組、ファウンテインズ・オブ・ウェインが、4枚目となるニュー・アルバム『Traffic And Weather』を完成させた。2003年の前作『Welcome Interstate Managers』は流れや構成のまとまりを感じさせる一枚だったが、今回は流れ以上に各々の楽曲が立っている。

「いつもそうだけど、先にプランを立ててアルバムを作っていくことはない。最初にスタジオに入った時におもしろいと思ったり、関心のあることを曲にしていって、後で全体のテーマがついてくるんだよ」(アダム・シュレンジャー、ベース)。

 実際に、「珍しくみんなでスタジオでジャムってたらELOっぽいピアノ・サウンドが入ったんで、そこから徐々に形作られていったんだ」(アダム)という“Strapped For Cash”は、「たまたまできたっていう感じだよ」(ジョディ・ポーター、ギター)とのこと。

 しかしながら、そんな〈たまたま〉の積み重ねが、「スタジオの扉を開けたらたまたまその楽器があった。前のバンドがいろんな楽器をそのまま置いていくから、じゃあ使ってみよう」(アダム)となったそうで、タイトル曲でのウォッシュボードや、“Michael And Heather At The Baggage Claim”でのメロディカといったユニークな小技に繋がっている。

 いまだに彼らが他のパワー・ポップ勢と一線を画し、突出した人気を保っているのは、年齢がやや高め(笑)──ではなく、アダムの語る「4人がさまざまなタイプの音楽を聴いていて、それを寄せ集めて自分たちで消化してできた」豊富な必殺メロディーもさることながら、「いい意味で間があるような音楽をめざした」(アダム)という才能としか言いようのない〈抜き〉と〈引き〉の匙加減だと思う。それはアルバム内における曲の置き方も同じ。今作でも勢いのある曲に混じってカントリー・フレイヴァーたっぷりの脱力系ナンバー“Fire In The Canyon”がイイ味を出している。

「グラム・パーソンズのような微妙さというか、カントリーとロックの中間ぐらいの曲だよね」(アダム)。

 それは彼らにとってのポップとロックの関係と同じで、アダム自身も「僕らはポップな曲を書いているロック・バンドかな」と語る。ポップに寄りすぎると力強さが損なわれるし、ロック色が強すぎると聴いていてしんどい。〈あなたたちのサウンドは、バランスが絶妙ですね〉と伝えたら、ジョディが一言「ジャスティン(・ティンバーレイク)とは違うだろ(笑)?」だって。

 それはさておき、〈自分たちがどのくらい凄いのか〉ということに対して、この人たちほど無関心な人たちもいないだろう。そう、彼らの音にはその構えなさゆえの人懐っこさが滲み出ているのだ。

「楽しい雰囲気でレコーディングしようと心掛けているよ。そういうのって、音に伝わって残ると思うんだ」(アダム)。

 もちろん『Traffic And Weather』も楽しい一枚。まるでサーカス(観たことないが)のようである。
▼ファウンテインズ・オブ・ウェインの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年04月12日 16:00

更新: 2007年04月12日 17:22

ソース: 『bounce』 285号(2007/3/25)

文/米田 郷之