インタビュー

Donnie

真摯に社会を見つめるソウルマンから届いた、新しいニュースとは?


 自主リリースしたボッサ・ソウルの名曲“Do You Know”をきっかけにジャイアント・ステップと契約を果たし、2002年に傑作ファースト・アルバム『The Colored Section』をリリースしてからおよそ5年。その間に来日公演やわずかな客演を行いつつも、ドニーはしばらく休養に入っていたようだ。

「凄く温かく迎えられた楽しい思い出があるから、日本は大好きだよ。でも、この5年間は凄くタフな時期だった。精神的にも混乱していたし、活動する気になれなかったんだ。ベストでないものを提供したくなかったから、レコーディングもしなかった。自分自身を見つめる日々だったね」。

 悩める時期を経て、ようやくレコーディングに入ったのがおよそ1年前だという。そしてその成果が、今回リリースされたセカンド・アルバム『The Daily News』だ。スティーヴ・ハーヴィーのプロデュース体制や完成までの行程は前作同様ながら、コンセプトをそのまま表題に据え、より明確なメッセージ性を前に出した点は前作と今作の大きな違いだろう。

「今回は新聞を読んでいるような、つまりそれぞれの曲が見出しになっていて、歌詞が記事……みたいなアルバムを作りたかったんだ。新聞ってクリエイティヴな要素が強いと思うんだよね」。

 もちろん、その新聞はスポーツ紙やタブロイドではなく、マーヴィン・ゲイ(何とドニーの従兄弟である!)の『What's Going On』に通じる部分も多い、シリアスな記事が中心のものだ。

「そうだね。かなりストレートなメッセージが多いと思うよ。現実のニュースは戦争などの問題だらけだから、曲名も“Atlanta Child Murders”や“911”などニュース的なものになった。そうした日々の問題を通じて、みんなに日常の幸せを再確認してほしいと思ってるんだ」。

 こう書くと堅苦しい作品のようだが、前作から続投となる元ルーファスのボビー・ワトソン(ベース)にギャップ・バンドのジミー・メイコン(ギター)、さらに元アース・ウィンド&ファイアのアル・マッケイ(ギター)らソウル~ファンク界の敏腕プレイヤーが紡ぎ出すサウンドの聴き心地は相変わらず絶品で、ドニー自身も「前作よりグルーヴの強い作品になったと思う」と胸を張る。マーヴィンやスティーヴィー・ワンダーの深いメッセージもしなやかなグルーヴを得てこそ世界へ羽ばたくことができたのである。逡巡の末に表現者としてひとまわり大きくなったドニーは、先人が踏み入った領域へと歩を進めはじめた。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年05月24日 19:00

ソース: 『bounce』 286号(2007/4/25)

文/出嶌 孝次