インタビュー

時代に先駆けたチャレンジをしてきたUAの音楽履歴

UA 『Petit』 スピードスター(1995)
T・スキー・ヴァレイと同じビートの“Horizon”などは、藤原ヒロシによるメロウな歌ものプロデュース・ワークのひとつの到達点ともいえる。そして朝本浩文楽曲との相性は、UAの憂いのある歌の個性を決定づけた。

UA 『11』 スピードスター(1996)
大沢伸一、竹村伸和、青柳拓次などヴァラエティー豊かなクリエイターを迎え、彼女の鋭い音楽的嗅覚がいきなり発揮されているが、ワイルドさと穏やかさを秘めたヴォーカルがそれを決してスノビッシュにしない。

UA 『AMETORA』 スピードスター(1998)
“親子パシャパシャ”に顕著な、ひだまりのあたたかさのようなファミリアーな感覚。アート・リンゼイ、SILENT POETS、LITTLE TEMPOらが参加した多面性のなかに、UAの前向きな明るさや陽の部分が出たアルバムだ。

UA 『turbo』 スピードスター(1999)
スリップとの交流など、いち早くジャム・バンド・シーンやサーフ・ミュージックに興味を示してきた彼女が、同じく重要なエッセンスであるダブを主軸に、オーガニックなサウンドのウェイヴに乗る。

AJICO 『深緑』 スピードスター(2001)
浅井健一の刃物の如き鋭利なギターと、TOKIEと椎野恭一によるしなやかなリズム・セクションの上で、ロック・バンドのヴォーカリストとしてのライヴ感溢れるダイナミズムと、寓話性を持つ世界観を際立たせている。

UA 『泥棒』 スピードスター(2002)
現実と非現実を分かつ断層に浮かぶ強烈なジャケのインパクトも含めて、ラテン文学の魔術的リアリズムを彷彿とさせるシュールなムードが横溢。レイ・ハラカミらのイノヴェイティヴなサウンドに臨んだ声には気迫と覚悟を感じる。

UA 『SUN』 スピードスター(2004)
エレクトロニカ、フリージャズ、現代音楽と多様な要素が絡み合う過激な手法を多用しながら、耳にすっと入り込んでくる感触と突き抜ける開放感は、彼女が意識の向こうにある深淵を超え、次の扉を開いたことを証明しているよう。

UA 『Breathe』 スピードスター(2005)
『Golden green』でもキーマンとなった内橋和久と行われた、自身初となるアルバム1枚を通してのコラボ。二人きりのセッションを楽しんでいるようなリラックスしたムードが親和性を高めている。それは、旅を経た安堵にも似ている。

菊地成孔×UA 『cure jazz』 スピードスター(2006)
オーセンティックなジャズの名曲群が現在の視点で一度解体され、ふたたび50年代的に甦える。そんな菊地のニューウェイヴ的な脱構築されたスタンダード観により、奔放なヴォーカリゼーションはまた新しい場所へ導かれている。

  • 前の記事: UA

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年06月28日 19:00

ソース: 『bounce』 288号(2007/6/25)

文/駒井 憲嗣

関連リンク

記事ナビ

  • UA
    • 時代に先駆けたチャレンジをしてきたUAの音楽履歴