こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

Foxxi misQ


  「誰もが聴きやすい音楽ではなく、ライヴで熱狂してもらえる音楽がやりたいんです」(CHIE)。

 良い曲よりも、格好良い曲。R&Bっぽいポップス、じゃなくてジャストR&B。それがFoxxi misQのやりたいことだ。実にきっぱりとしていて、迷いがない。

 オーディション番組で出会って結成。曲ごとにフロントが入れ替わる〈全員主役制度〉を敷き、ヴォーカル・ディレクションも自分たちで行うCHIE、DEM、YU-A。3人の経歴はそれぞれだが、完全ヒップホップ/R&B志向と、メイクも衣装もフル装備でガンガンに踊る、魅せて聴かせるショウビズ魂、そして「モチヴェーションとテンションの高さ」(YU-A)という点は見事に一致している。デビュー・シングルの“Tha F.Q's Style”は、三味線風(?)東洋フレーズが熱く炸裂するバウンス・ビートで、ライヴ・オープニングの定番。まさに野心に溢れる彼女たちの選手宣誓みたいな曲だった。そして、デビューから1年後にリリースされるファースト・アルバム『GLOSS』も、やっぱり幕開けはこの曲だ。

 アシッド・ジャズ風のソウル・バンドを組んでいたCHIEは「ディアンジェロなどのネオ・ソウル」、チアダンスを通じて音楽よりも先にまず踊りに目覚めたYU-Aは「アフリカ音楽とかレゲエのような、民俗的ビートでガンガン踊れる曲」、大阪の音楽専門学校で歌と踊りを勉強したDEMは「ライヴで盛り上がれるパーティー・チューン」を希望、『GLOSS』にはそれら全部……つまりさまざまなブラック・ミュージックの美味しいツボがめいっぱい詰め込まれている。ただ、“Tha F.Q's Style”から“ULTIMATE GIRLS”“A-L-I-V-E”と、デビュー以来3枚のシングルは、アッパーなビートで攻めまくった。

 「あたしたちはどんどん行くんだ、という姿勢を伝えたかったんです」(YU-A)。

 むせるような欲望に満ちていた彼女たちがこなしたライヴは月平均7~8本、昨年12月に至っては12本。やってやってやりまくった。「あれは、ほんと、すごかったよね……」(DEM)と200%完全燃焼の2006年を終え、2007年。ようやく息つぎをした3人は、新しい顔を見せていく。ZEEBRAをフィーチャーした先行シングル“Luxury ride”では、派手なシンコペート・ビートで攻める姿勢は変わらずだが、晴天の野外でカジュアルめな衣装で歌い踊る感じとか、緩やかなメロディーラインとか、いままでにない色っぽさとヌケ感がある。

 そうして生まれた『GLOSS』では、先述のZEEBRAや、JiN、B-BANDJ(FU-TEN)、CORN HEADらヒップホップ~レゲエの野郎衆が濃く絡んでくる。彼らをドーンと受け止め、ガンガン歌い進む姿が、彼女たちをよりタフに、ゴージャスに見せるのだ。アルバムを締め括る“Party Booty Shake”のゲストはMiss Monday。王道ディスコ・サウンドにスウィートなメロディー、キュートな歌いっぷりで、はっきりと新しさを提示している。

 「ポップすぎる?という不安もあったんですけど、新しい面を出したかったので挑戦しました。デビューして1年経って、ようやく余裕が出てきたことが表れてるんだと思う」(CHIE)。

 「せっかく初めて女性をフィーチャーしてるんだし、曲も可愛いし、とことんやろうってことで、もう思いっきり可愛く歌っちゃいました。新鮮だった!」(DEM)。

 同曲のように、いわゆるキャッチーなメロディーでも〈緩んだ〉印象がないのは、歌と対等に力強いトラック、これでもかと重ねてくるコーラスなど、あくまでもR&Bな作りだからだろう。何をやっても、ちゃんと彼女たちの意志は透けて見えるのだ。

 『GLOSS』には、そのような彼女たちの揺るぎない意志と欲望、そしてそれらが幅を広げていく様がパックされている。声も変われば、歌も変わる、顔も変わる。肝の座った根性だけはそのままに。平均年齢22歳、成長盛りの強気な女の子たちが、日々姿を変えていくのを見ることほど、楽しいことはない。

PROFILE

Foxxi misQ
CHIE、DEM、YU-Aの3人から成るヴォーカル・ダンス・ユニット。TVのオーディション番組をきっかけとして2006年に結成。〈SKECHERS〉のイメージ・キャラクターにも選ばれ、同年7月に“Tha F.Q's Style”でデビュー。全国のクラブやダンス・イヴェントなどで精力的なライヴを展開していく。同年10月にリリースしたセカンド・シングル“ULTIMATE GIRLS”のスマッシュ・ヒットで活動を軌道に乗せる。その後もライヴ・パフォーマンスを重視しながら着実に支持を広げ、今年1月に“A-L-I-V-E”、5月にはZEEBRAをフィーチャーした“Luxuly ride”とコンスタントにシングルを発表していく。2002年6月27日にファースト・アルバム『GLOSS』(R and C)をリリースする。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年07月05日 16:00

更新: 2007年07月05日 17:51

ソース: 『bounce』 288号(2007/6/25)

文/亀田 裕香