こんにちは、ゲスト

ショッピングカート

インタビュー

GOSSIP


 日本中の、いや世界中の〈はみだし者〉の女の子たちよ、立ち上がれ! そう、忘れずに両手でこのゴシップのニュー・アルバム『Standing In The Way Of Control』を掲げながら!! かつてパティ・スミスが、マドンナが、ライオット・ガール・ムーヴメントが、そしてコートニー・ラヴが、男性社会であり続けるロックンロール・ワールドに痛快な一石を投じてくれたが、21世紀最初のガールズ兵器であるこのゴシップのフロント・ウーマン、ベス・ディットーの存在はまさしく現在を生きる女の子たちにとってのガイディング・エンジェルだ。何しろこの写真(中央)を見てほしい。彼女が普通じゃないことは、一目瞭然だろう。男子100人を集めたとしてもかなりの物好き数人しかホレないタイプの女性かもしれない、外見的には。しかし、そもそも〈普通〉って何? ベスのアティテュードの素晴らしさを見抜けない男子なんぞ、とっととケツをまくっておうちに帰ってちょうだい!

「私にとってはライオット・ガール・ムーヴメントの出現で、ニルヴァーナなんていないも同然の存在になってしまったわ。彼女たちってみんな政治的でフェミニストで、しかもほとんどがレズビアン。私たちの世代には確実に大きな影響を及ぼしてると思うの。それにライオット・ガール以降、ポップ・カルチャーの中でも社会的にもあれほどのインパクトを持ったパワフルなムーヴメントって起こってないわよね」(ベス:以下同)。

 みずらかもレズビアンであり、フェミニストであることを公表しているベス。パンクやインディー・ギター・ロックを聴きながら米アーカンソー州で幼少期を過ごした現在26歳の彼女は、昨年のNME誌の〈Cool List〉で第1位に輝くほど、いま注目を集めている。100キロ近い巨体を可愛らしい衣装で包み、歌い踊るベス。ポスト・パンク以降を感じさせる〈踊れるロックンロール〉なムードが充満したゴシップのサウンドは、ベスの歌声が乗ったとたんにまるで自由を祝福する福音の如き神々しさと迫力を持ちうるのだからすごい。彼女たちの音楽をちゃんと聴けば、〈ベスのフリークス性が高いから応援したいのではない!〉というこの気持ちを、きっとわかってもらえるだろう。その素晴らしさとは、様式や常識に縛られない自由さが満ち満ちていることにほかならないのだから。これこそ、パンクが黎明期に人々を魅了した要素であり、ロックンロールの歴史に一石を投じた女子ミュージシャンたちが例外なく内包していた共通項だ。〈元始、女性は太陽だった〉と言ったのは平塚らいてう先生だけどね、太陽ってのはそもそも〈自由〉の象徴なんだ!

 ちなみにベスは先日、そのふくよかな身体を惜しみなくさらしたヌードで、NMEの表紙を飾るという大冒険をした。
「あのカヴァーを見て賛同してくれる人もいれば、否定的な人もいると思うんだけど、そこで〈どうして自分はそう思うのか〉って考えると思うのね、きっと。何かを考えるきっかけになってほしいっていう意図はあったわ」。

 女の子たちに〈自分らしくあれ〉というメッセージを伝えたい?――そう訊くと「もちろんよ」と答えた後、こんなふうにNMEのヌードについて語ったベス。彼女の意識からは、おもしろいほどに自己顕示欲がすっぽり抜け落ちている。だからこそその音楽は、どこまでも楽しく自由で攻撃的で、とにかく一体化したくなるのだ。

 なお、間もなく開催される〈サマソニ〉での初来日も決定。

「ライヴではとにかくオーディエンスを取って食ったりしない。もちろん、殺したりもしないわ(笑)。ママからそう躾けられてるからね」。

 ああ、ユーモアのセンスも抜群。同性ながら、ホント惚れるわ。

PROFILE

ゴシップ
ベス・ディットー(ヴォーカル)、ブレイス・ペイン(ギター/ベース)、ハナ・ブリリー(ドラムス)から成る3人組。99年にワシントン州オリンピアで結成。ほどなくしてインディー・レーベルのKと契約を結び、EP『The Gossip』でデビューを飾る。2000年、キル・ロック・スターに移籍してファースト・アルバム『That's Not What I Heard』を発表。2003年にドラマーが脱退し、新たにハナが加入する。同性婚の権利を否決したブッシュ政権への批判ソング“Standing In The Way Of Control”がインターネットを通じて話題を集めるなか、2007年1月にニュー・アルバム『Standing In The Way Of Control』(Back Yard/HOSTESS)を発表。8月8日にその日本盤がリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年08月23日 17:00

更新: 2007年08月23日 17:58

ソース: 『bounce』 289号(2007/7/25)

文/妹沢 奈美