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インタビュー

ハリー細野が語る、ポップ・ミュージックの〈ルーツ〉探訪

 今回カヴァーしたアル・デクスターの“Pistol Packin' Mama”は、1943年にビルボードNo.1になった大ヒット曲で、ヒルビリーといってもいいし、ポップ・ミュージックといってもいいかもね。シェブ・ウーリーの“The Wayward Wind”は「ローハイド」っていうTV西部劇が大ヒットしてて、中学のときにそのアルバムが出てみんな買っちゃうわけ。ロカビリーの人なんだけど、聴いてみるとコンガがチャカポコ入ってたりしてスゴイへんてこりんで地味~なカントリーだった。でも結構聴いてていまだに心に残ってたから。60年代に40年代のカウボーイ・ソング・スタイルでやってるんだけど、こういう音をいま録りたいって思ったの。(ヒップホップとSFXに刺激されて80年代前半に作った“BODY SNATCHERS”が、ジェリー・リード風のカントリー&ウェスタンに変換できることを今回セルフ・カヴァーして発見したことについて)ジェリー・リードははっぴいえんどの頃に大好きで、カントリーの人なんだけどギターがすごく上手い。ちょっとロカビリーが入ってるスワンプ系で、“Amos Moses”って曲はファンキーでリズム&ブルースになってる。

 メリル・ムーアはピアノのブギとスティール・ギターでヒルビリー・ブギみたいなことをやっていた人で、ブギウギとカントリーって組み合わせにゾクゾクっとして、それに触発されて作ったのが“ポンポン蒸気”(76年作『泰安洋行』収録曲で今回セルフ・カヴァー)。(もともと坂本冬美のために書いた“SHIAWASE HAPPY”で、ザディゴとエチオピア風の河内音頭が極めて相性が良いってことを発見したことについて)ザディゴやケイジャンはニューオーリンズ周辺のフランス文化圏の音楽ですごくおもしろい。ドクター・ジョンの『Gumbo』で解説されてるんだけど、ザディゴも〈ニューオーリンズ・チェンジ〉っていう2コードで出来てて、“Pistol Packin' Mama”もそうだから、コード2つでいい曲が出来るんだなっていう(笑)。コードが少なくなると、メロディーもリズムも伝統的なものが身体から自然に出てくる。演歌や民謡もそうだから、今回は演歌っぽく歌ってる曲も入ってて。カントリーも、アラブやエチオピアの音楽もみんな演歌みたいに聴こえるから、自分のなかではそれらがもうワイワイと行ったり来たりっていうか、同居してる感じ。(談)

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年09月27日 03:00

更新: 2007年09月27日 17:30

ソース: 『bounce』 291号(2007/9/25)

文/編集部

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