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インタビュー

KATE NASH


 いきなりですが……確かにこのアーティストは〈MySpace〉を通じて成功への切符を手に入れました。そして彼氏への不満を題材にしたデビュー・シングル“Foundations”が、あの“Smile”と比べられてしまうのもわかる気はします。だからって〈リリー・アレン2世〉っていうキャッチフレーズはどうなのよ?

「いまのところ気にしていないわ。メディアのいうことは無視するようにしてるの。私にはやるべきことが他にあるから。それに自分の範疇を超えたところまでコントロールしようなんて思わない」。

 件の“Foundations”が6週連続でUKチャートのTOP3圏内をキープし、まさに彗星の如くシーンに現れたケイト・ナッシュ。その登場があまりに唐突だったためか、的外れなハイプが飛び交っていますが、先に言っておくとこの子は二番煎じなんかじゃありません! 現在20歳の彼女はもともと演劇の道を志していた女の子。専門学校を卒業後に映画や舞台のオーディションを受け続けるもチャンスに恵まれず、そうこうしているうちに階段から転げ落ちて入院してしまいます。そんな冴えない時期に、母親から贈られたギターで作曲活動を開始。これが思わぬ幸運を招き、このたびのファースト・アルバム『Made Of Bricks』にまで繋がっていくわけです。なお、このアルバムは本国ですでにチャート1位を獲得済みで、巷には彼女のヘアスタイルやファッションをマネするキッズが続出するなど空前のケイト・ブームに沸き返っているのだそう。こういう状況を当人は予想していたのでしょうか?

「全然(笑)。だいたい何をどう予想していいのかもわからなかったし。私は曲を書いてギグをやるだけ。ビジネスについては私の考えるべきことじゃないから人任せにしてたわ」。

 もっとキャピキャピした子かと思いきや、とっても冷静に受け答えをしてくれる彼女。今作はプランBやブロック・パーティーを手掛けてきたポール・エプワースをプロデューサーに迎えているのですが、それについて訊ねてみても、「私はプロデューサーがどういうもので、どういう人がいるのかもよくわかってなかったの。だから私から彼に頼んだんじゃなくて、マネージャーが引き合わせてくれたのよ。もちろん気が合ったからいっしょに仕事したわけだし、結果的にそれが吉と出たけど」とサラリ。背伸びしてカッコイイ回答を探したり、無理にその場を取り繕おうとは絶対にしない。そんな姿勢は作品にも顕著に表れています。

「歌詞を書く時に悟ったんだけどね、正直でいるのがいちばんよ。このアルバムを作る時も頭の中では自分の求めるものがハッキリ見えていたんだけど、それに固執しなかった。意味わかる? アイデアは山ほどあったの。だけど違う展開が出てくれば、それはそれで良し、みたいな。ただ、音的にはホームメイド感覚の温かさが欲しかったし、だからあらかじめ作ったデモの楽しさとか遊び心は活かしたかった。デモではけっこうピアノを使ったから、その感じもしっかり出したかったの」。

 その言葉どおり本人によるチャーミングなピアノの伴奏を全面に敷いて、ギターやハンドクラップ、オモチャみたいな打ち込みなどで味付けを施した『Made Of Bricks』。リリックひとつをとっても喜怒哀楽に溢れ、曲調もさまざまだが、〈手作り感溢れるキュートなポップス〉という点においてブレはない。ちなみに、本人がアルバムの中でもっとも気に入っているナンバーは“Mariella”とのこと。ヒステリックなシャウトが映えるパンキッシュな同曲を、フェイヴァリットに選んだ理由とは?

「この曲の主人公が持つ自由さが好きだからよ。彼女はすごく頑固で、誰が何と言おうと気にしないのよね。そして自分がどうなりたいかを自分で決めていくの。だから周りから見るとワケがわからないというか、孤高の存在というか。でも、すごくクールでしょ!?」。

 それってまさにアナタのことじゃない!

PROFILE

ケイト・ナッシュ
87年生まれ、ロンドン出身のシンガー・ソングライター。16歳の時に女優をめざして演劇の専門学校に入学。卒業後に足の骨を折って入院する。静養中、母親からギターを贈られたことを機に作曲活動を開始。2007年2月にモシ・モシからリリースしたファースト・シングル“Caroline's A Victim”が〈MySpace〉を中心に話題を呼び、ポリドールUKと契約。7月にリリースされたメジャー・デビュー・シングル“Foundations”が、6週連続でTOP3にチャートインを果たす。その後も〈グランストンベリー〉に出演するなど注目を集めるなか、8月にファースト・アルバム『Made Of Bricks』(Polydor UK/ユニバーサル)を発表。10月3日にその日本盤がリリースされる。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年10月04日 18:00

ソース: 『bounce』 291号(2007/9/25)

文/山西 絵美