インタビュー

Guiro

名古屋発、未来行き音楽列車が僕たちの目の前を駆け抜けていく。話題のバンドがファースト・アルバムをリリースした!!


  このうえなくポップなのだが、口どけが苦かったり甘かったりして、〈こいつはなんだ?〉とモヤモヤしてしまう。名古屋の4人組、GUIROの待望のファースト・アルバム『Album』の印象だ。あと、聴き心地を表現すると、甘噛み感覚と言うのかな。くすぐったくて温かいけど、痛い。といった感想を、高倉一修(ヴォーカル/ギター)に伝えた。

 「モヤモヤするかもしれないね(笑)。最近はデジタルの数値で割り切れちゃうような〈間〉の音楽が多いけど、そもそも割り切れないところに生まれるモヤモヤとかふくよかさが音楽本来の魅力だったはず。それは意図的に入れ込めるものではないし、僕らの音楽にあるかどうかわからないけど、入れ込みたいって思いは強い。その思いが滲み出て音の隙間を埋めてくれていればいいかな」(高倉:以下同)。

 バンド始動から10年。これまでに4枚のシングルをリリースし、それらはどれも耳の肥えた音楽ファンから支持を受けた。2004年にはフィッシュマンズのトリビュート盤『SWEET DREAMS for fishmans』に参加。個性的な“MAGIC LOVE” を披露したが、これはなんだ?とフィッシュマンズ・ファンを驚かせたことだろう。そして、ここにきてアルバムがようやく登場。心のモヤモヤがやっと晴れたと喜んでいる人も多いはずだ。

 「10年とはいえ、別の仕事をしながらのごまかし期間が長くて。やったるで!って気持ちを隠してた期間が8年くらいある」と笑う高倉だが、とにかく彼らの長い道程を凝縮した高密度な作品に仕上がった。クールなブラジリアン・ジャズ、ソフトなシティー・ポップ、ハリー細野的エキゾチカ、フリーでアシッドなフォークといった要素が渾然一体となっており、良い意味での捉えどころのなさを生んでいる。では、彼個人の音楽趣味は?

 「僕の曲にはすべて〈宇宙戦艦ヤマト〉が入り込んでいるって言っていいぐらい(笑)。世間で70年代音楽がブームの時はそっちに寄らなかった。クロード・ソーンヒルや『Birth Of The Cool』のマイルス・デイヴィスがずっと大好きで。あと、ポール・モーリアを聴いたときに天啓を受けた感じになったなぁ」。

 高倉の声や詞が持つ内向的な響きとバンド演奏のオープンな感触との絶妙なミックス具合、これがいまのGUIROの魅力であり、バンド全員がその綱渡りを楽しんでしている点が『Album』のおもしろさに繋がっている。きっとこのバランス感覚は今後もイイ働きを見せて、イイ感じのモヤモヤを僕らに与えてくれるだろう。次作はなるべく早くお願いしたい。

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掲載: 2007年10月04日 18:00

ソース: 『bounce』 291号(2007/9/25)

文/桑原 シロー