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インタビュー

ANOUSHKA SHANKAR AND KARSH KALE

現代のインド音楽シーンをリードする2つの若き才能が手を結んだ、話題必至の一枚が登場!!


 「初めて会ったのは、僕がDJをしていたクラブに彼女が遊びに来ていた時なんだ」とエイジアン・マッシヴの中心人物であるタブラ奏者のカーシュ・カーレイは、若手トップ・シタール奏者のアヌーシュカ・シャンカールとの出会いを語る。インド古典音楽にルーツを持ち、イギリス生まれで現在はアメリカを拠点にインドを行き来しながら活動を続ける両者だが、アヌーシュカは古典、カーシュはクラブ・フィールドのイメージが強く、これまで近くて遠い存在に感じていた。しかし、今回のコラボレーションのきっかけは、似たようなバックグラウンドと輪のなかにいたからこそ生まれたのだ。

「友人からの誘いでアヌーシュカといっしょに曲を作ったら相性がいいことに気付いて、アルバムを作ることにしたんだよ」(カーシュ・カーレイ)。

 こうして、『Breathing Under Water』と名付けられたアルバムが誕生することとなる。

「大半の曲はシタールとギターで書いたの。インド古典のメロディーを書いてからその上にビートを乗せていく、その逆のやり方をすることはなかったわ。これは科学の実験のようにいろいろなものを混ぜていく〈フュージョン〉とはわけが違うのよ」(アヌーシュカ・シャンカール)。 

「彼女は僕が普段演奏しない古典音楽の曲を作るように、逆に僕は彼女にビートのプログラミングをするように、それぞれ後押ししたんだ」(カーシュ)。 

 今作のテーマに〈水〉を選んだのはどうしてだろうか。

「インドの詩の世界では、水は距離、切望、迷いを象徴する。私たちミュージシャンはいつもこれらと直面してるわ。仕事であちこちに行くと会いたい人に会えなくて淋しくなるのよ(笑)。それで、世界を巡る船乗りのように、故郷や愛する人を恋しく思う気持ちを表現してみた」(アヌーシュカ)。

 彼女がそう語るように、甘美でスリリングなメロディーのなかに切なさや儚さ、哀愁がどの曲からも感じられる。また、ジャンルを越えたビッグネームの参加も今作に彩りを添えている。

「スティングやノラ(・ジョーンズ)が参加してくれたことで多くの人が関心を持ってくれるでしょうね」とアヌーシュカは話すが、確かに日本でも今作を機に新たなファンを獲得するのは間違いないだろう。さて、クライマックスではアヌーシュカの父、ラヴィ・シャンカールも参加し、唯一エレクトリックなアレンジを排除した心安らぐ潤いのある曲を3人で演じている。

「父こそが私たちのインスピレーションの源。そこから旅をはじめた私たちはさまざまな方向へと流れる川を作り出していったの」(アヌーシュカ)。 

 ラヴィから世界中へ流れ出ていったインド音楽の新たな潮流は、デジタルとアナログの世界を両方楽しめる、もっとも贅沢な形でわれわれを満たしてくれるだろう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2007年10月11日 02:00

更新: 2007年10月11日 17:27

ソース: 『bounce』 291号(2007/9/25)

文/おきよし