The Hives
タイプの違う4人のプロデューサーを迎えてハイブリッドに花開いた新作で、堂々の勝利宣言!? イカしたロックとは何か、そろそろ白黒ハッキリさせようぜ!
バカがつくほど真っ直ぐなガレージ・サウンドと爆笑エンターテイメントのステージングで、2001年のガレージ/ロックンロール・リヴァイヴァルの立役者の一組として世界的な注目を浴びることになったハイヴス。プライマル・スクリームやオアシスを育てた男として知られる元クリエイションの社長=アラン・マッギーに惚れ込まれ、まずはUKで大ブレイクを果たしたスウェーデン発の5人組なのだが……いやはや、どこまでも極端な男たちである。学生服風のコスチュームに身を包んで今回放つのは、ガレージとは一線を画したダンスフロア対応可能のナンバーたち。ティンバランドの『Shock Value』に参加した経験なども反映されたのかどうか、とにかく『The Black And White Album』と名付けられた最新作は、R&Bもヒップホップもファンクも、それからセックス・ピストルズ風のパンクもポスト・パンクもブリット・ポップも呑み込んで、笑いと共に放出している。
「これはすごく多様なアルバムだよね。だからある曲から次の曲に進む時に、とてもダイナミックなんだ。そこに落差が欲しかったんだよ。その意味ではヒップホップみたいだろ? つまりヒップホップのアルバムを聴いてると、新しいプロデューサーが入ってくるところとか、ここは他の奴がビートを作ったなとかってわかるよね。俺たち、そのダイナミズムって意味では、ヒップホップのそれとクロスするような作品が作りたかったんだよ。ヒップホップのレコードと、グレイテスト・ヒッツのレコードがクロスするようなやつ、というか。うん、だからあきらかにこれは多様なレコードだよな」(ニクラウス・アーソン、ギター)。
さまざまなジャンルを折衷する場合、そこに加えるべきみずからの〈個性〉を意識しすぎて、ギクシャクとした真面目なものになる可能性もある。が、ハイヴスにそんな心配は無用!メジャー・デビューを飾った前作『Tyrannosau-rus Hives』では若干抑えられていた気もするペレの超絶エンターテイナーとしての七変化の声色が、〈なにもそこまで……〉なほどに炸裂し、昂揚感をもたらしていく。
「これまでと確実に違うものにはしたかったね。だって……もちろん俺たちはこれまでのハイヴスのアルバムを愛してるけど、全部ギアをトップに入れたまま突っ走るって感じだっただろ? それを壊すのは唯一、対抗策しかない。俺たちは過去の作品への対抗策として、いろんなものを入れてそれをうまく働かせようとしたんだ。俺たちのやりたかったのはそれなんだけど……つまりハイヴスがまったく違うことをしたのを見せて、これまでのイメージを壊したかったんだよ」(ハウリン・ペレ・アームグヴィスト、ヴォーカル)。
メジャー・デビュー作が商業的にそれほど成功しなかったこともあって、バンドは疲弊するまでツアーやライヴを行い、そしてクタクタになった状態で本作に取り掛かっている。そこで妙にシリアスなムードが今作を覆わなかったことも特筆すべきだろう。4人のプロデューサーと共にめざしたい音に向かいつつ、笑いの心も忘れないままロックンロール・エンターテイメントの進化型をものにしてしまった。
「色のアルバムってたくさんあるだろ? で、そのなかでこのタイトルが俺たちにすごく合うと思ってね。伝統を壊すっていうか。アイツらは1色しかないけど、俺たちには2色もあるからね。2倍なんだよ」(ニクラウス)。
その思考回路は流石ハイヴス。毎日聴いても、毎回笑えるのもいい。ただのお笑いならば一回聴けば十分。つまりコイツらの音楽的挑戦こそ、私たちを飽きさせない理由なのだろう。
▼関連盤を紹介。
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カテゴリ : インタビューファイル
掲載: 2007年12月06日 21:00
ソース: 『bounce』 293号(2007/11/25)
文/インタヴュー・文/妹沢 奈美、プロデューサー紹介/山西 絵美