インタビュー

Seal

原点回帰を果たした新作は、シール版〈ダンス・フロアの告白〉なのか!?


  シールが約4年ぶりに完成させたアルバム『System』は、マドンナの『Confessions On A Dance Floor』を手掛けたステュアート・プライスの全面プロデュース作。よって、エレクトロニックなダンス・ビートを纏った内容になっている。グラミー受賞曲“Kiss From A Rose”以降、〈深みのあるバラードを得意とするヴォーカリスト〉というイメージが付いていた感もあり、突然の路線変更かと驚かれる方も少なくないだろう。が、“Killer”や“Crazy”といった曲をヒットさせていたデビュー当初、彼の歌声の後ろで鳴っていたのはやはりエレクトロニックな音だった。従って、今作はシールにとっての原点回帰作と言うことができる。

 「うん。原点に立ち返りたいという気持ちが確かにあった。そう、ファースト・アルバムのときのやり方にね。でもそれは、エレクトロニックなサウンドということよりも、まずギターありきなんだ。“Killer”も“Crazy”もギターで作曲したものだった。そこに立ち返って、シンプルなギター・コードと強力なメロディーのもとに音楽を作ることをきちんとやりたかったのさ」。

 なるほど、エレクトロニックなビートを音響的に用いていても、根底にあるのはギターを中心にしたオーガニックな楽器編成による力強いメロディー。だからヒンヤリした機械的な感触はなく、シールの声の温かみがダイレクトに伝わってくる。とてもエモーショナルなのだ。

 「曲自体が強いものであれば、アレンジがどうなろうともエモーションを保つことができる。ダンス・アルバムであるという事実とは裏腹に、この『System』はとても誠実な作品なんだ。もしもステージで歌っている時に停電になって、電気系のビートが鳴らせなくなっても大丈夫。ギター片手にこれらの曲を歌っても、曲の良さはちゃんと伝わるものになっているからね」。

▼シールの作品。

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掲載: 2008年02月07日 22:00

ソース: 『bounce』 295号(2008/1/25)

文/内本 順一