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インタビュー

Hot Chip

温かみのあるメランコリックなエレクトロ・ポップが、暗闇の中で蠢いてるよ!!
なんだか向こうの世界はすごく楽しそうだけど……みんなで行っとく!?


 2001年にUKのモシ・モシからミニ・アルバム『Mexico EP』でデビューして以降、作品を出すたびに話題を集め、快進撃を続けてきたホット・チップ。野暮ったい5人の男が繰り出すチープなディスコ・ロックは、音楽ファンのみならずさまざまなアーティストやメディアも巻き込んで大きな渦となり、2007年には〈コーチェラ〉〈グラストンベリー〉〈サマソニ〉などビッグ・フェスティヴァルを席巻、いままさに世界中を呑み込もうとしている。そんな彼らを一躍時代の寵児へと導いたのが、前作『The Warning』であり、そこに収録された“Over And Over”のヒットだった。さぞや劇的な環境の変化が訪れたことだろうと思いきや……。

「うーん、そうでもないかな。あの曲はある意味ホット・チップの音楽を確立したとも言えるけど、でも僕たちの音楽の作り方とか普段の生活において、大きな変化があったとは言い難い。世界的なスマッシュ・ヒットってわけじゃないからね。ただ、クラブで繰り返しかけてもらって世間に広まった曲ではあるし、そのおかげでみんながヒット曲だと思ってくれているなら嬉しい限りだよ。新しいアルバムはもっと温かい感じに仕上がっているけど、良いタイミングでみんなに受け入れてもらえることを願っている。何かひとつのパターンに囚われたくないし、そういう意味では評判を気にしすぎても良いものは生まれないと思うからね。いや、本当はもっと心配しなくちゃいけないのかもしれないけど(笑)」(アレクシス・テイラー、ヴォーカル/キーボード:以下同)。

 前作は持ち味である美しいメロディーやポップ感を活かしつつも電気化を推進、ダンスフロアで映えるビートの強度とヴァラエティーに富んだリズムを獲得していた。その反動ではないだろうが、ライヴ・フィーリングを前面に出したというこのたびのニュー・アルバム『Made In The Dark』では、ワンテイクで録音を済ませた“Out At The Pictures”や“Hold On”といった楽曲を筆頭に、良い意味で粗さや生々しい感覚を掴むことができる。

「ライヴやツアーはアーティストとしてずっと続けてきたことだし、アルバム制作の合間にもコンスタントにプレイしてきて、僕たちの音楽活動のある意味基盤となっているものでもある。ステージの上での興奮はライヴならではだし、だから今回ライヴ・レコーディングにも挑戦して、ロングテイクでその雰囲気や音そのものを切り取ることにしたんだ。とてもエキサイティングな経験だったよ。エレクトロニックな音にヒューマンライクな生の質感が加わって、これをやって本当に良かったと思ってる。正直そのへんはジェイムズ・マーフィーがLCDサウンドシステムでやってることとかを観て、凄く刺激を受けたんだけどね」。

 そのLCD同様にロック・リスナーからの人気はもちろん、UK本国ではダンス・ミュージックの専門誌でも大々的に取り上げられ、非常に好意的に迎えられてきたホット・チップ。しかし新作ではあえてテンポを落とし、ロック的な方向へと舵を取ったことで、かえってフロア志向とソングライティング力という彼らの個性が鮮明になり、よりユニークな一枚に仕上がった。

「そうだね。どっちサイドの曲も活動初期から書いていたし、今回のアルバムはその二面性を全面に押し出したスタイルになっている。それはタイトルを〈Made In The Dark〉にした理由のひとつでもあるんだ。だからそのあたりを楽しんでもらえたら嬉しいな」。

 2月からマシュー・ディアをスペシャル・ゲストに招いたUKツアーを予定している彼ら。今年はリミックス活動を減らし、ライヴに力を入れていくようだ。

「まだ決まったわけじゃないけど、〈フジロック〉で演奏できる可能性はありそうだよ」。

 ちょっと気が早いけど、今年の夏にまた会えるかも!?

▼ホット・チップの作品を紹介。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年02月21日 18:00

ソース: 『bounce』 295号(2008/1/25)

文/青木 正之