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インタビュー

Astro

ポップでキラーなウイルスに要注意!! 限界知らずの7人が放散するダンサブルなロッキン・エレクトリップ・ラップ・ミュージックはどこまでも拡大していくぞ!!


  〈ロックとヒップホップのクロスオーヴァー〉なんて言葉が一般化して久しい時代でありながら、リスナーはいまだに自分の聴いている音楽がどのジャンルに属するのかを気にしている。その傾向はこれからも変わらないことなのだろう。ここで紹介するAstroは、4MC+2DJ+1トラックメイカーの7人編成から成る混合ラップ・ユニット。彼らが放つ音楽は、ロック、ハウス、エレクトロなどが混ざり合うトラックの上で、痛快なラップと親しみやすいメロディーが交錯する。それはボーダーを飛び越える挑戦のようにも聴こえるし、あらゆる音を差別なく楽しむ耳を持った世代らしい遊びと取ることもできる。〈とにかく自由であること〉がAstroをやるうえでの最低条件と語る彼らは、自分自身がどこに属していると考えているのだろうか。

「僕はAstroのなかにいても、ヒップホップをやっているつもりです。自分がこれまでやってきたラップの積み重ねの上にある音楽というか。それは方法論じゃないんですけど」(was、MC)。

「(トラックメイカーの岩渕)マサル君が作る音は凄い好きなんだけど、俺はAstroに関してはヒップホップ・リスナーとしてのツボは刺激されない。聴いた人が持つAstroの〈わからなさ〉っていうのは、メンバーの価値観がバラバラな感じが曲に出ているからだと思います。逆に言えば、それがAstroの味なんです」(tao、MC)。

 2004年に結成されたAstroの歴史は、MIDICRONICAとimaginionという、2つのアンダーグラウンド・ヒップホップ・クルーの出会いから始まっている。その2つのユニットが結合したのは、トラックメイクを一任されている岩渕マサルという男の存在があったからだ。

「ヒップホップというよりも、ラップ・ミュージックをやっている感じ。僕は根本的にロックが好きなんです。音楽って結局、最初に聴いた時に格好良いと思えるかどうかが大事だから、ジャンルじゃないですよね」(岩渕マサル、トラックメイカー)。

  〈格好良いと思えるかどうか〉という命題は、このたび登場したファースト・フル・アルバム『Virus of irony』でまさしく実践されていることだ。同作には、ヨーロッパを中心とした現行ロック・サウンドへの歩み寄りを見せつつ、ヒップホップ・リスナーをも刺激するであろう全方位型の楽曲が詰め込まれている。

「アルバムを作るうえで、ジャスティスみたいなエレクトロやニューレイヴには触発されました。ずっとロックと打ち込みを融合しようとしていたから、ニューレイヴを聴いた時には〈してやられた〉と思いましたね(笑)。Astroでは、最終的にはラップが入っていて、踊れる曲を作りたいんです」(岩渕)。

 ヒップホップを軸としながら、あらゆる表現を呑み込もうとするAstroの野心。彼らがその貪欲な姿勢をどこまで広げてみせるのか、『Virus of irony』を聴けばまずはその一端が見えてくるはずだ。

▼Astroのミニ・アルバム。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年03月06日 22:00

ソース: 『bounce』 296号(2008/2/25)

文/ヤング係長