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インタビュー

cutman-booche

ついに初のフル・アルバムが完成! 何気ない日常を柔らかく切り取った楽曲から、あなたはどんなメッセージを受け取りますか?


 ソウルやブルース、ジャズといった音楽をグツグツと煮込んでいくみずからの音楽性を〈boosoul〉として掲げ、大阪を拠点に活動する3人組、cutman-booche。このたびリリースされる『Permanents』は、彼らにとって初めてのフル・アルバムだ。

「メンバーの誰かが良い演奏をして、それについていったら自然と良いテイクになった、みたいなノリで出来た曲がこのアルバムに入ってる感じです。単純に音を鳴らしてることが嬉しい、っていうバンドを組んだ頃のような純粋な気持ちで作りました」(金佑龍、ヴォーカル/ギター)。

 彼らの特徴であるオーガニックなサウンドと、金佑龍のルーディーな歌声はそのままに、バンドの真骨頂と言えるブルージーな“Verse book”からロック的なアグレッシヴさが漂う“meditation”に至るまで、和気あいあいとした空気から湧いてくるエネルギーが今作には詰まっている。

「これまでは、いろいろなことを伝えたいと思って(曲に)要素を加えすぎてしまうところがあったんです。でも最近は、ライヴの時もお客さん一人一人にしっかり曲ごとのメッセージを届けたいと思うようになったこともあって、〈この曲でいちばん伝えたいことは何か〉というのにより意識的になりました」(林周作、ベース)。

「いかにダイレクトにお客さんへ手を差し伸べられるかというところだと思うんです。それを受け取ってほしいし、聴いてくれる人もそこから何かを発信してほしい」(金)。

 昨年の〈フジロック〉をはじめとしたライヴでの姿は、くっきりとした音像と明快な言葉でリスナーとのさらなる対話をめざしているように映った。そして、どこかの都市を夢想することから生まれたセカンド・ミニ・アルバム『clisco line』に顕著だったイマジネイティヴなヴィジョンに替わり、今作で表現されているのは生活のバイオリズムに沿った心の動き。スケール感のある“手の中のlife”も、毎日の暮らしや身近にいる大切な人を思う気持ちから生まれたのだそう。ゆったりとした活動のペースが、彼らのいまある個性を育んできたようだ。

「『Permanents』は、〈ずっと聴けるアルバム〉という意味もあるし、結成当初からバンドを長く続けてくことを大切にしてきた僕らの姿勢も表現したタイトルなんです」(小宮山純平、ドラムス)。

「メンバーとの普段の会話から新しい音が生まれる。その積み重ねのなかで起こる変化を、日々感じていられる気持ちを持ち続けていきたいです」(金)。

 今作において彼らは、これまで以上に何気ないドラマを身の回りからすくい上げ、温かみ溢れる音へと昇華している。ことさらにポップな意匠やこれ見よがしの派手な演出は、決してそこにはない。だからこそ『Permanents』に込められた3人の思いは、届けられた僕らの心のなかでも静かに、そして確実に膨らんでいくことだろう。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年03月13日 23:00

ソース: 『bounce』 296号(2008/2/25)

文/駒井 憲嗣

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