インタビュー

CAJUN DANCE PARTY


  女子1人を含む5人組の新人バンドが昨年リリースしたシングル“Amylase”は、〈ロックを自分の経験値だけで量るな!〉〈奢るな!〉というメッセージを眼前に突きつけられたような、久しぶりに衝撃的な楽曲だった。ロックは一握りの新世代によってのみ革新される。そしていま、時代の移り変わりを強烈に意識せずにはいられないバンドが現れた。その名はケイジャン・ダンス・パーティー。多様化と拡散化が進行する2000年代後期のUKロック・シーンに登場した彼らのファースト・アルバム『The Colourful Life』は、後年エポックメイキングな一枚として語られることになるであろう傑作である。

 「アルバムとして成り立つ作品を作ることに徹したんだ。いまはダウンロードの時代で、アルバムの存在感が薄れ、シングルの価値が上がっているよね? 僕たちはそれが嫌だった。全曲聴いてくれるような素晴らしいアルバムを作りたかったんだ。聴けば聴くほど味が出る、普遍的な作品をね。仕上がりにはとても満足してるよ。自分たちの理念を一切曲げず、最高の時期に完成させることができたから」。

 メンバーのなかでもひときわキュートな巻き毛のフロントマン、ダニエル・ブルンバーグ(以下同)は意気揚々と語る。そして現在のUKシーンについて、快活な口調でこう続けた。

 「確実にひとつ言えることがある。それは、僕がいまのUKロックをあまり好きじゃないってこと。最近の音楽業界では音楽よりもセレブ感とかキャラクターが重視されてるから、バンドの成功はフロントマンがいかに嫌な奴か、もしくはプレスでどれだけスキャンダラスなことを言えるかにかかっている気がする。本来は音楽が重要視されなきゃいけないのにね。だから僕も年齢的な部分でいろいろ言われるのが、正直あまり好きじゃない。はっきり言って、本来は音楽が評価されるべきであって、それ以外は関係ないと思うんだ」。

 17歳の彼が感じているそのフラストレーションは、恐らく多くの若者たちが同時代性として共有している感情なのかもしれない。そこから生まれた、捻くれていてロマンティックで、涙を誘うほど叙情的な歌声とメロディーには、極めてピュアでパーソナルなメッセージが込められている。

 「うん、僕たちの音楽に社会的なメッセージが入ってないのは確かだよ。別に誰かに聴いてもらおうと思って歌詞を書いて、歌っているわけじゃないからさ」。

 音楽的な探究心のみに旺盛で、第三者には多くを求めない――そのスタンスからは、これまでのロック・アイコンとは違った魅力が滲み出ている。強いて近いバンドを挙げるとすればスミスになると思うのだが、性急なアルペジオとメランコリックなフレーズをめいっぱい詰め込んだロビー・スターンのギターには、確かにジョニー・マーを彷彿とさせるものがある。

 「僕はスミスについてはよく知らないんだけど、ロビーは彼らの大ファンだよ。そういえば“The Colourful Life”という曲で、ロビーがジョニー・マーの12弦ギターを使っているんだ。このギターは、ジョニーが僕らのプロデュースを手掛けたバーナード・バトラーに昔プレゼントしたものらしくて。で、バーナードがそれをロビーに貸したってわけ。ロビーにとっては凄い経験だったみたいだよ」。

 さて、こちらが用意した最後の質問は、〈ロック・バンドとしてケイジャン・ダンス・パーティーが達成したい夢を、思い浮かぶ限り挙げてください〉。これに対して、ダニエルは簡潔にこう答えてくれた。

 「陳腐にならないこと! 誇りに思えることしかしないこと!」。

 〈リバティーンズ以降〉に対するカウンター世代らしい、実に清々しい発言だ。〈ケイジャン以降〉のUKロック・シーンに何が起きるのか。いまからそれが楽しみでならない。

PROFILE

ケイジャン・ダンス・パーティー
ダニエル・ブルンバーグ(ヴォーカル)、ウィル・ヴィグノールズ(ドラムス)、ロビー・スターン(ギター)、マックス・ブルーム(ベース)、ヴィッキー・フロインド(キーボード)から成る平均年齢17歳の5人組。2006年、クラスメイトだったダニエルとロビーを中心にUKはロンドンで結成。2007年4月にインディー・レーベルのウェイ・アウト・ウェストからリリースしたデビュー・シングル“The Next Untouchable”が話題を呼んで、〈グラストンベリー〉への出演を果たす。このときのステージがきっかけでXLと契約を結び、同年8月にセカンド・シングル“Amylase”を発表。このたびファースト・アルバム『The Colourful Life』(XL/Beggars Japan)をリリースしたばかり。

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掲載: 2008年05月01日 16:00

更新: 2008年05月01日 17:48

ソース: 『bounce』 298号(2008/4/25)

文/冨田 明宏