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インタビュー

LEONA LEWIS


  女性歌手であればとりあえず〈ディーヴァ〉と大袈裟に形容して煽っておくような傾向にうんざりすることは少なくないが、しかしこのようなスケール感を持った歌手ともなれば〈ディーヴァ〉という形容もずっぱまり。5オクターヴの声域を活かしながらドラマティックなバラードばかりを歌っていくこの人には、〈新時代のディーヴァ〉といったベタなキャッチコピーが自然なものに感じられる、ある種の貫禄のようなものがすでに備わっている。初期のマライア・キャリーあたりを想起させもする久々登場の王道〈歌い上げ系シンガー〉、レオナ・ルイスfrom UK! 本国でデビュー・アルバム『Spirit』が楽々と200万枚超えしたかと思えば、今度はプリンスの“Nothing Compares 2 U”をポップ解釈したようなシングル“Bleeding Love”がなんとビルボード・チャートでも1位に。ちなみにUK出身の女性歌手が全米1位を獲得するのは、キム・ワイルド以来、約20年ぶりなんだそうな。

 「音楽で世界中の人と繋がっていけるのは嬉しいことだわ。この曲も、アルバムも、世界のどこの人でも共感を持って聴いてもらえるものになっていると思うの」。

 そう話す彼女は「子供の頃からいつも歌っていたから、シンガーになること以外、考えたことがなかった」そうだが、その思いを現実のものにするきっかけとなったのが、UKの人気TVオーディション番組〈X-Factor〉。そのファイナル進出の前段階にして、クライヴ・デイヴィスがサイモン・コーウェルに「きみは次のホイットニー・ヒューストンを手中にしているかもしれない」と電話したという逸話もあるぐらいだ。そしてその米英音楽界の大物ふたりが初めてタッグを組み、彼女を売り出すことに。シーンへの登場は実に華々しいものだった。

 「〈X-Factor〉のような番組に出ると、人生があっという間に変わってしまう。でも私は下準備ができていたから、ヘンに混乱することもなかったわ。6歳から人前で歌っていたし、ブリット・スクールではシアター・パフォーマンスの経験を積むだけでなく、レコーディング技術の勉強なんかもしていた。地元のクラブに出ることもけっこうあったしね。だから、この世界に入る用意はできていたわけ。そのうえありがたいことに、自分のサウンドを見つけ出すまでにじっくり時間も与えてもらえた。アルバムも焦点を絞り、時間をかけて完成させることができたのよ」。

 いよいよ日本でもリリースとなる、そのファースト・アルバム『Spirit』。ダラス・オースティン、ジャム&ルイス、ウォルター・アファナシエフ、ニーヨ、スターゲイト、ジョナサン“JR”ロッテムら新旧のヒットメイカーがズラリと揃ってはいるが、あれもこれもと雑多なサウンドが混在するアルバムが多い昨今には珍しく、彼女も語るとおり非常に焦点の絞られた作品になっている。決してプロデューサー負けすることなく、そのエモーショナルなヴォーカルで〈レオナ・ルイスの世界観〉と呼べるものを見事に築いているのだ。

 「このアルバムは私の第一章であり、私自身の紹介であり、恋愛の辛い面と明るい面の両方を描き出している。とてもエモーショナルで、私のソウルを表現しているわ。哀しみがあれば幸せもあって、いかにも私らしいと言えると思う」。

 この堂々たる佇まいと落ち着きで、まだ22歳とは驚きだ。が、彼女はシャイな性格であり、それは番組などでも言われてきたことらしい。

 「オーディション番組に出たからといって大胆で外交的な人間とは限らない。そう、私はシャイだし、自分の殻を破るのに時間がかかるほうなの。ただ、自信は持っているし、信念にそぐわないことはやらないわ。おとなしいから受け身なんだろうと思う人もいるようだけど、私は騒ぎ立てることなく自分を主張する方法を知っているの」。

PROFILE

レオナ・ルイス
85年4月3日生まれ、UKはハックニー出身のシンガー。12歳の頃からピアノとギターを使って作曲活動を開始し、その後アート・スクールに進学。卒業後はアルバイトをしながら自主でレコーディング活動を行う。2006年にTVオーディション番組〈X-Factor〉でグランプリを獲得し、同年12月にシングル“A Moment Like This”でデビュー。2007年10月にセカンド・シングル“Bleeding Love”をリリース。同曲が全英シングル・チャートで7週連続1位を記録して話題となる。11月に本国でファースト・アルバム『Spirit』(Syco/Sony BMG UK/BMG JAPAN)を発表。2008年に入ってUSデビューを果たすなどさらなる注目を集めるなか、このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年05月08日 22:00

ソース: 『bounce』 298号(2008/4/25)

文/内本 順一