インタビュー

IVORYLINE


  まったくキリがないったらありゃしない! オルタナ~パンク~エモを通過したインディー出身のロック・バンドが、メインストリームに喰い込んでくるのはもはや日常茶飯事。次から次へと新人が出てきて、ソレを追うだけで精一杯……なんてキッズも多いのでは? しかし、このアイヴォリーラインだけは覚えておいたほうがイイ! まずはイケメン揃いのアーティスト写真を見てくれよ。コレだけでも女子からの黄色い絶叫が聞こえてきそうなのに、アンバーリンらを手掛けるアーロン・スプリンクルをプロデューサーに迎えた『There Came A Lion』は、ファースト・アルバムとは思えないほどのクォリティーの高さで、日本デビューを果たす前から輸入盤が大人気を博しているのである。アンダーオースやコープランドなど、人気バンドを多数発掘してきたトゥース&ネイルがプッシュする彼らこそ、〈ネクスト・ビッグ・シング〉に間違いナシ! そこで、現在スケアリー・キッズ・スケアリング・キッズらとツアーに出ているメンバーをキャッチした。

 「実はいま、ツアー会場にいるんだ。2時間ぐらい前にプレイし終えたばかりなんだけど、今回のツアーのなかでは間違いなく今夜が最高だった。実際、回数を重ねるごとに凄いことになっているんだ」(ジェレミー・グレイ:以下同)。

 開口一番、興奮冷めやらぬ状態の声が返ってきた。いままさに上昇気流に乗っているのをみずから体感しての言葉なのだろうが、ここまで辿り着くのは決して容易なことではなかった。2003年夏にテキサス州はタイラーで結成された彼らは、当初別のバンド名で活動を開始している。

 「地元のシーンは、定着しているハコが少ないことと、プロモーターがいないという問題点を抱えてる。ショウが行われるのはたいてい教会とか青少年施設で、しかも告知はバンド自身が行っているのが常だね。俺たちは地元のファンなくして、ここまで到達できなかったと思うよ」。

 その後、2005年初頭にアイヴォリーラインと改名し、2006年にジョーンゼッタと共演したことをきっかけに、トゥース&ネイルとの契約に漕ぎ着ける。「ひと目見て、〈彼らこそ俺たちが探し求めていた、俺たちとウマが合い、バンドに対する信念とヴィジョンを分かち合える人たちだ〉と思った」というパートナーは、ご存知のように、クリスチャン・レーベル。しかし、バンドはもっと別のところを目標としている。

 「自分たちを〈クリスチャン・バンド〉と呼ぶ必要はない。俺たちは全員クリスチャンで、ロック・バンドをやっているだけさ。俺たちはすべての人に向けてプレイしたいし、自分たちの信じていることを分かち合ったり、人生の問題などをファンと語り合ったりすることには常に前向きでいたいと思っているんだ」。

 色香を漂わせたヴォーカルのメロディーラインや、神々しさすら感じさせるほど美しいコーラスはバンド最大の武器と言えるが、その一方で骨太のハード・ドライヴィンなロックをベースとした楽器隊のコンビネーションもこれまたお見事! タフで硬派な印象を受けるのは、やはりテキサス出身だから?

 「テキサスの土地柄と自分たちの音楽の関連についてはいままで考えたことはなかったなぁ。ラフでタフなサウンドということに関しては、あえてそうしようと意識したことはないけど、俺たちの音楽に反映されていることは、すべて俺たち自身からごく自然に湧き出てきたものなんだ」。

 たとえルックスは甘めのイケメン揃いでも、そのサウンドはポップではなく、あくまでもロック。シーンを圧巻するであろうこの若き獅子の動向に注目せよ!

PROFILE

アイヴォリーライン
ジェレミー・グレイ(ヴォーカル)、ダスティ・キトル(ギター)、ロバート・ウッドワード(ベース)、スコット・ソーシア(ギター)、ウェス・ハート(ドラムス)から成る5人組。2003年夏にテキサス州はタイラーで母体となるバンドを結成。2005年、ウェスの加入を機に改名して現在の編成となる。翌2006年には6曲入りのファースト・ミニ・アルバム『The Life You Have』をリリースし、〈ワープト・ツアー〉に初参加。その後、年間100日を超えるライヴを行うなど、ファン・ベースを固めていく。2007年にトゥース&ネイルと契約。2008年2月に本国でファースト・アルバム『There Came A Lion』(Tooth & Nail/EMI Music Japan)を発表。このたびその日本盤がリリースされたばかり。

カテゴリ : インタビューファイル

掲載: 2008年06月05日 17:00

更新: 2008年06月05日 17:58

ソース: 『bounce』 299号(2008/5/25)

文/塀戸門家